マンション修繕費問題「ドローン」が救う納得の訳 人手に頼ってきた点検・維持管理をDX化する技術

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セブン-イレブン・ジャパン、出光興産、日産自動車、日本マクドナルドなど多くの企業に建物の点検・維持管理サービスを提供しているJMでも、今年4月からドローン点検サービスを開始した。高精細な動画・写真をドローンで撮影し、20年以上にわたって点検業務を行ってきた技術者の診断をパッケージ化して低価格化を図った。

「建物点検で重要なのは、破損や故障などが発生する“予兆”を見逃さないこと。定期報告だけでなく、大きな地震や台風などのあとにもドローンを飛ばして気になる箇所を点検し、必要な対策を講じることが、結果的にライフサイクルコストの削減につながる」(JM社長・大竹弘孝氏)

従来の目視や全面打診による点検は劣化部分を検出するのが主目的で、建物の劣化状況を数値データとして蓄積するのが難しかった。ドローン点検であれば建物の全体を赤外線や高精細な画像データにして蓄積できる。これらのデータを機械学習などのAIを使って解析することで点検精度の向上につなげられる。

ドローン点検に変更すると費用はどうなる?

JMの試算によると、建築面積1200平方メートル高さ24メートルの7階建て規模のマンションに、仮設足場を設置して目視点検するだけで費用は880万円程度かかるが、画像撮影によるドローン点検であれば18万円程度で済む。

もし3、6、9年目の定期報告を目視からドローン点検に替え、12年目は全面打診に替えて赤外線のドローン点検を利用する場合、赤外線検査料は別途サービス提供企業から見積もりを取る必要があるが、定期報告の費用は「72万円+赤外線検査料」となる計算だ。

マンションも物件ごとに劣化状況が異なるので、大規模修繕工事の周期を一律に伸ばすことはできない。ドローン点検で蓄積された画像データなどを見ながら、大規模修繕工事を延長できるかどうかを判断するのが合理的な方法だろう。

すでにマンションの修繕費用の見積もりに赤外線の画像データを活用する動きも出てきている。大規模修繕のときに仮設足場を設置して全面打診を行って外壁タイルの張替えを行うと、当初見込みより劣化が進んでいて予算オーバーする懸念がある。

「施工業者の見積もりを取る前に工事予算を事前に把握したいので、管理組合から赤外線のドローン点検を依頼されるケースも出てきた」(スカイエステート・青木社長)

既存ストックを効率的に維持管理するためには、3次元設計システムのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やドローンなどのデジタルデータの活用は欠かせない。安全で災害に強い都市環境を実現するためにも、これまで人手に頼ってきた点検・維持管理のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に積極的に取り組む必要があるだろう。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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