マンション修繕費問題「ドローン」が救う納得の訳

人手に頼ってきた点検・維持管理をDX化する技術

定期報告の実態は国交省のホームページで情報公開されていないが、所管する住宅局建築指導課によると、2018年度の集計で特定建築物に指定されている数は約28万8000棟。主な内訳は、オフィスビルが約1万4000棟で報告率が87%。マンションなどの共同住宅が約11万4000棟で74%、旅館・ホテルが約2万6000棟で56%となっている。

「報告率は60%台で推移してきたが、ここにきて徐々に上がってきている」(住宅局担当者)状況ではある。しかし、3割近い特定建築物が定期報告を実施していないわけで、報告率100%の達成にはほど遠い。

負担が大きい高所における点検作業

特定建築物の定期報告や屋外広告物の安全点検で負担になっているのが、高所における点検作業だ。

目視点検では、地上から双眼鏡などを使った判定を国や特定行政庁でも認めている。しかし、実際に点検業務を行っている複数の企業に確認すると「高層ビルの上層部分の判定は現実問題として困難だ」という。

問題は10年ごとに義務付けられた「全面打診」による調査だ。3年ごとの点検は双眼鏡による目視で対応しても、人間が全面打診を行う場合は高所作業車、仮設足場、ゴンドラなどの設置が必須となる。このコスト負担を軽減するために壁面を移動して打診検査を行うロボットの開発も進んでいるが、まだ導入は進んでいない。

マンションでは、これまで12年周期での大規模修繕工事が推奨されてきた。国交省でも竣工後10年を経て3年以内に外壁修繕を行う場合には、全面打診を工事に合わせて行うことで免除していた。

しかし、建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」が社会問題化するマンションでは、工事資金不足に陥る管理組合も増えており、その打開策として大規模修繕の周期を延長するニーズが高まっている。

この時に問題となるのが定期報告だ。大規模修繕の周期を13年超に延長する場合の対応を国交省に確認すると「10年をめどに全面打診などの調査が必要になる」(住宅局)との見解を示す。

2021年2月にマンション管理大手の東急コミュニティーが、大規模修繕の周期を12年から最大18年に延長する工事パッケージの販売を開始した。「仮設足場を設置して全面打診を実施する定期報告の費用を加えると、18年周期に延長するコストメリットが得られないマンションも出てくる」(同社担当者)と懸念する。

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