中国にとってのアフガン問題
中国は、タリバンについてポジティブイメージを前面に出すような報道を繰り返している。8月15日のカブール陥落に合わせて「人民日報」の微博(ウェイボー)アカウントは、「60秒でわかるタリバン」という動画を投稿した。これはテロ活動についてまったく触れずに、タリバンを民族主義的勢力として紹介する内容で、国内で批判が相次ぎ、4時間余りで削除された。しかしその後も中国の対外宣伝メディアであるCGTNは、タリバンが秩序回復のために努力する姿を強調して報道している。
中国のタリバンに対する友好的な姿勢は、こうした宣伝にとどまらず、建設的な関係構築に向けて動いているように見える。9月8日、中国はアフガニスタンに対する人道支援として、ワクチンや食糧など2億元(約34億円)相当の提供を発表した。
さらに同日、中国は、欧米の主催するアフガニスタンに関する会議には出席せず、パキスタンやイラン、中央アジア諸国との間で周辺国によるアフガン問題外相会議を開催した。9月17日には上海協力機構(SCO)サミットとSCOとロシアを中心とする集団安全保障条約(CSTO)の合同サミットが開催されるなど、アフガニスタンをめぐる中国外交が活発となっている。
中国は、アメリカ軍撤退後のアフガニスタン情勢にどのように関わろうとしているのだろうか。この地域の秩序をリーダーとして牽引し、中国中心の秩序を作ろうとしているのだろうか。中国の対アフガニスタン政策の根底にあるロジックを探ってみたい。
中国の国内安全保障問題が、アフガニスタン問題に対する中国の中心的関心となっている。これは、アフガニスタンの安定は、新疆ウイグル自治区の安定と関わると中国が考えているためである。中国は、新疆ウイグル自治区の分離を目指す東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)などの分離独立勢力やテロリズムが外国勢力とつながるという警戒を、一貫して抱いてきた。とくにこれらと中央アジアやアフガニスタンのテロリズムとのつながりを警戒している。
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