しかし従来、中国はアフガンの安定化を丸投げに近いかたちでアメリカにほぼ依存してきた。アメリカ軍が全面的に撤退し、力の空白が生まれたことで、アフガンの安定化という役割を誰が担うのかが大きな課題となっていることも事実だ。
これは中国外交の大きなトレンドとしての、他国への介入の必要性の増大と関わる。中国の台頭に伴って海外における利益が拡大し、それを守る必要が増大していること、そして過剰なまでの国内安全保障への不安感が高まっていることから、中国外交において以前よりも積極的に他国に関与したり、介入したりするインセンティブが高まりつつある。
中国では、従来の内政不干渉という建前を守りつつ、自国の影響力を他国に及ぼしていくために、「中国の特色ある建設的介入」(王毅外相)を行うべきという議論が行われている。
中国のアプローチと不安
では、中国はどのようにアフガニスタン問題に関わろうとしているのだろうか。現在のところ、中国にとっては、タリバンを中心とした政権が、外国におけるテロ活動を支援せず、原理主義的な立場を改めて穏健化したうえで、これを中心とした安定政権を築くことが最善となっている。経済協力や外交的承認を誘因にして、タリバンの穏健化を促すのが、中国が使える手段となるだろう。
中国がタリバンのポジティブイメージを宣伝しているのは、国内に向けてタリバン政権と友好的関係を作ることを説得するのと同時に、ある意味でタリバンに向けたメッセージであるともいえるかもしれない。
中国にとって重要なのは、多国間の協力であり、とくにパキスタン、ロシア、イラン、中央アジア諸国との協力を重視している。9月8日、パキスタンの主催で、中国、パキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、イランによる周辺諸国外相会議が開催された。また、9月17日にはSCOサミットとSCO-CSTOの合同サミットが開催され、その中でアフガニスタン問題が取り上げられている。
これに併せて、前日には中国、ロシア、パキスタン、イランによるアフガニスタン問題に関する非公式外相会談が開催された。これら会議では、アフガニスタン問題についてこれら周辺国が協力して対処することを確認し、タリバンに対して包括的政治枠組みを作り、穏健な政策を取ることを促すとともに、反テロ協力を進めることがうたわれた。中国がパキスタンなどとの協力の下で、アメリカ撤退後の地域秩序をうまく安定させることができれば、それは中国主導の地域秩序への第一歩となるかもしれない。
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