次期総理に伝えたい「世界標準の財政政策」の正解

ケチにも浪費にもならない「賢い投資」が常識

問題点2:単純な財政出動は1970年代に否定された

ところで、経産省はなぜ「単純な量的な景気刺激策ではなく」と書いたのでしょうか。それは歴史の教訓を受けてのことでもあります。

単純に財政さえ出動すれば経済は成長するという考え方は、1970年代に否定されています。この時代、アメリカやイギリスでは、政府が財政出動をしても、失業率が下がるどころか高まって、経済は成長しませんでした。スタグフレーションの時代です。財政出動しても経済が成長しなかったのは、供給側に問題があったからです。ここは極めて重要なポイントです。

この経験で、従来のケインズ経済学は否定されることになりました。イギリスでは、ケインズ政策は1979年のサッチャー首相の誕生によって、アメリカでは1981年からのレーガノミクスによって、否定されました。いわばフリードマンの時代の始まりです。

財政出動さえすれば経済は成長するという見方は、マクロ的には正しく見えても、ミクロの問題を無視した単純すぎる見方だったということがわかりました。バラマキ型の財政政策は、短期的な措置としてはありえても、中長期的な解決策ではないと認識されるようになって、今に至ります。

サッチャー首相の経済政策などを総称してsupply-side economicsと言います。需要側よりも供給側を優遇して、全体の経済成長率を高める考え方です。法人税を下げたり、規制緩和や構造改革をすれば、供給も需要も増えると論じられます。新自由主義とも言い、グローバリズムなどにもつながります。

今は経済成長率の低下、インフレ率の低下、設備投資の減少、労働分配率の低下、格差の拡大などを受けて、このsupply-side economicsは世界的に再評価されています。私はその動きが正しいと思います。

日本は「単純な財政政策に効果なし」の証拠物件

問題点3:日本は財政出動の効果を否定する絶好の例

実は海外では、日本は単純な財政出動の限界を示す事例として、多々紹介されています。1990年代に入ってから、日本政府はバブル崩壊による不況が短期的なものだとして評価して、何度も税率を下げ、金利も下げ、量的な景気刺激策を繰り返しました。しかし残念ながら、先ほど見たとおり、少なくとも経済成長につながることはありませんでした。

その何よりの証拠が、対GDP比の政府の借金(政府の借金/GDP)が世界一高くなっているという事実です。

日本では分子の借金を増やしたのに、分母のGDPがそれほど伸びなかったので、この比率が世界一になってしまいました。もしも財政出動をした分だけ経済が回復したのであれば、分母も分子も同時に増えますので、この比率はここまで悪化していなかったでしょう。また、ずっと緊縮財政であるならば、分子の借金がこれほど増えることはありませんでした。

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