次期総理に伝えたい「世界標準の財政政策」の正解 ケチにも浪費にもならない「賢い投資」が常識
この説は、それなりに理にかなっていますし、オーソドックスな経済学にのっとると、この結論に至ると思います。供給に対して需要が不足した結果デフレになったのなら、その穴を財政で埋めるという考え方です。
つまり、諸悪の根源は緊縮財政にあり、政府が財政出動を積極的に行えば総需要が回復して、デフレが解消される。そうなれば企業の投資は活発になり、賃上げも行うようになる。一言で言うと、積極財政によって日本経済に立ち込めている暗雲は一気に晴れるという主張です。マジックのような効果が期待されているようです。需要さえ増えれば企業は必ず成長するし、賃上げも行うという性善説でもあります。
確かにオーソドックスなケインズ経済学では、経済成長は需要が決定すると考えるので、この考え方は理解できないことはありません。この考え方をdemand-side economicsと言います。
とはいえ、「需要さえ増やせば経済は必ず回復する」という見方には、重大な問題点があります。
緊縮財政を問題視する主張が抱える3つの問題点
ケインズ経済学では、不況のときには政府は財政を積極的に出動して、経済の均衡を高めるべきとされています。その目的は主に失業率を下げることにあります。逆に言うと、十分に失業率が低いときの財政支出は、オーソドックスなケインズ経済学では考慮されていません。少なくとも、単なる量的景気刺激策は想定されていません。
これは私の意見ではなく、教科書の内容です。私はこれを高校生のときに学びましたし、大学でも日本経済の戦後発展を勉強していたときに学びました。
言うまでもなく、ケインズ経済学で考えると今の日本で財政支出を増やすべきとは言い切れません。財政支出を増やすには、別の理屈が必要となります。なぜかというと、日本は失業率が低いだけでなく、史上最高の労働参加率を達成しているからです。
よって私は、「財政出動を単純に増やせば、経済は必ず回復する」という指摘に強い違和感を覚えます。
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