次期総理に伝えたい「世界標準の財政政策」の正解 ケチにも浪費にもならない「賢い投資」が常識

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世の中には、おおまかに分けると、日本経済の低迷の原因として緊縮財政を問題視する一派と、規制緩和・構造改革を重視する一派と、人口動態を問題視する一派があります。

まずはそれぞれが、何を根拠にどんな主張をしているのか、順に見ていきましょう。

インフレにさえすれば、経済は成長するか

緊縮財政を問題視する人の主張は、おおむね以下のようなものです。

「日本経済が20年以上成長していない原因はデフレにある。デフレから抜け出せないのは、総需要が足りていないからだ。総需要が足りないと生産性向上はできない。こうなってしまっている原因は、消費税を引き上げるなど、政府が緊縮財政政策を取り続け、積極的な財政出動をしなかったことにある。だから、デフレ脱却ができず、生産性も上がらず、賃金も増えないのだ」

実際には、日本が20年間ずっとデフレだったという指摘は事実ではありません。特に安倍政権になってから最近までは、日本は別にデフレではありませんでした。しかしデフレ圧力がかかっていると考えることはできますし、日銀の政策目標の2%インフレ率は達成されていません。

ですので、この「デフレ論」にも一定の意味があると考え、検証していきましょう。

改めて言うまでもなく、デフレは需給のバランスが崩れることによって起こります。需要が不足することによって起こる場合もあれば、供給過剰で起こる場合もあります。それぞれ「需要不足型デフレ」「供給過剰型デフレ」といいます。

標準的な経済学の教科書によると、「需要不足型デフレ」には以下の要因が考えられるとあります。

(1)世界経済の不景気
(2)緊縮財政政策
(3)消費者マインドの冷え込み
(4)貨幣供給量の減少(金利の上昇、銀行の貸し渋り、企業の借り入れ減少なども含む)

この20年間、世界経済は不況になっていないので、(1)は原因ではありません。また、特にアベノミクスが始まって以降、通貨供給量は減少していませんし、金利もずっと下がっていますので、(4)が原因ということもありません。

そのため、緊縮財政を問題視する人たちは、デフレの原因は総需要の不足であり、(1)と(4)はいずれも今のデフレ圧力の要因とは言えないと考えているのでしょう。(3)消費者マインドの冷え込みはある程度影響しているでしょうが、個人消費総額はずっと増加しているので、大きな要因ではありません。よって、残された主な原因は(2)の緊縮財政にあると結論つけているのだと思います。おそらく、緊縮財政政策を積極財政に転換すれば、諸問題は解決すると考えているのでしょう。

では、日本経済は本当に(2)の緊縮財政政策が原因で落ち込んでいるのでしょうか。たしかに、2009年あたりから、日本では政府支出が増えているものの、消費税などの引き上げによって対GDP比の税負担は増えています。アベノミクスの下でも、財政の健全性が重視されていたからです。

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