中等症・軽症患者の受け入れ医療機関である「東京曳舟病院」(墨田区)では、コロナ患者向けに最大18床を確保しているが、13~15床ほどの稼働が限界だという。その理由について、三浦邦久副院長はこう話す。
「重症化しても、重症者に対応する病院が満床状態のため転送できない。重症者も自院で治療し続けるしかなく、その分人手がかかる。今いる患者が重症化したときにも備えると、余力を残しておかなければならない」
内閣官房の報道発表資料によると、8月30日時点で開設されていた臨時医療施設は、都内で3カ所。そのうち、「都民の城」(渋谷区)と「品川プリンスホテル」(港区)は稼働していたが、運用が始まっていないのは同施設のみだった。
患者受け入れが遅れた理由は、大きく2つある。1つは施設への受け入れ基準だ。
「どれくらいの血中酸素濃度ならコロナの感染者を受け入れるか。症状が再び悪化した場合はどうするのか。こうした受け入れに当たっての基準やマニュアル作りに、当初想定していたより時間がかかっていた」(日本財団の担当者)
もう1つの理由は、医療スタッフの確保だ。軽症者向けの宿泊療養施設としての運用では、医師1人、看護師が4~5人で対応していた。だが、酸素濃縮器を導入し、回復中の患者の経過観察をするとなると、さらにスタッフ数が必要だった。
臨時医療施設に欠かせない人員
そこで協力を得たのが、訪問診療を行う在宅医だ。在宅医療のクリニックを展開する医療法人社団「悠翔会」(港区)の医師が、同施設へ訪問診療を行うことになった。
専門チームを作って多くの自宅療養患者の診察に当たっている悠翔会の佐々木淳理事長は、「自宅と病院の中間となる施設が必要だ」と訴える。在宅でできる治療には限りがあり、急変した際に救急車を呼んでも、入院できない恐れもあるからだ。
東京都は、新たに旧築地市場跡地(中央区)と「味の素スタジアム」(調布市)内にも酸素投与や抗体カクテル療法を行う臨時医療施設を整備し、9月中にも開設する方針だ。
そこでもハードルとなるのは、医療スタッフの確保だ。酸素投与を行う酸素ステーション(130床)を設置する都民の城では、医師2~3人、看護師が25人で回している。これに匹敵する人員体制を想定すると、2施設だけでも医師4~6人、看護師50人ほどが必要だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら