これまで日本にとって、アフガニスタンへの支援は、インフラ整備や農村支援、DDRと言われる武装解除、動員解除、社会復帰を目指した国家建設支援、民主化支援に集中していた。日本はこれまで約58億ドルの支援を行っており、アメリカやNATO諸国とは異なり兵力を伴わない支援として好意的に受け入れられてきた。また、NGOのペシャワール会の中村哲さんによる灌漑(かんがい)事業などはアフガニスタンの人々に大きな恩恵をもたらし、日本の支援が大きな成果を上げていた。
しかし、アメリカ軍の撤退により、こうした支援を通じて目指していた、アフガニスタンの自立とタリバンを排除する国家づくりは、その道半ばで途絶えることになる。しかし、こうした目標は見失われてはならないし、将来、タリバンの支配ではない民主的なアフガニスタンの国家建設が再開されることを目指すという崇高な目的は失われてはならない。
今後、日本はどのように関わっていくのが望ましいのだろうか。現時点では、日本はアメリカやIMFが行っている資産凍結を支援し、日本からの援助もタリバンが主導する政権に対するテコとして用い、女性の人権や女子教育などを認める限りにおいて支援をするといった、厳しいコンディショナリティーをつけた支援をするのが1つの方法として考えられる。
日本が援助を通じてアフガンに関与する好機
また、世界的な1次産品の高騰とタリバン支配後の経済混乱により、アフガニスタンは深刻な食糧危機に直面している。日本は中央アジア諸国やイラン、パキスタンとの協力で食糧支援を行い、人道的な側面からタリバン政権との距離感を測っていくことも可能であろう。
アメリカ軍の撤退により、ユーラシア大陸の真ん中に力の構造の変化が起きた。タリバンはアメリカ軍やNATO軍を追い出し、外国の支配を排除する姿勢を鮮明にしている。そんな中で、軍事的介入を行わず、シビリアン・パワーとしてかかわってきた日本が、援助を通じてアフガニスタンに関与し続けるチャンスでもある。
(鈴木一人/東京大学公共政策大学院教授、アジア・パシフィック・イニシアティブ上席研究員)
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