フジテレビ、愛国報道の「異様な光景」 ジャパンエキスポは排他的なイベントではない

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2011年のサムスン電子のブース

過去にもサムスン電子やLGエレクトロニクスなどが大きなブースを出したり、韓国のマンガ(マンファ)を紹介するブースが目立っており、これを締め出せという報道が日本であった。

だが実態は韓国系企業や出展の多くはジャパンエキスポ本体ではなく、同時開催のコミック・コンというイベントへの出展だった。こちらは、アメコミやその他のオタク系のイベントという扱いになっている。

日本関連とその他の展示を、形式的にせよ分離しようとするところに、主催者側の配慮が感じられる。主催者も日韓問題に関しては気を使っていると思われる。

「偏狭な愛国主義」は避けるべき

フジテレビだけでなく、経済産業省の姿勢も問題だ。フジテレビの件の特集の最後には、経産省からの反応が次のように付されている。「今回の取材について、『クールジャパン』を推進する経産省は、『コメントを差し控える』としながらも、『2015年には、職員が現場に赴く』としている」。

実は経産省は2011年に楽天と組んで「ヴィラージ・ジャポン(日本村)」というパビリオンを出展している。日本村は180㎡の広さに15の出展企業とイベント用ステージを備えたものだった。またJETROの職員も毎回ジャパンエキスポには調査で訪れている。であれば、経産省は2015年に職員を送るまでもなく、「韓国問題」が存在していることは知っているはずだ。「コメントを差し控える」のではなく、どのように考えているかを表明しなければならない。

経産省は多額の予算をクールジャパンにつぎ込んでおり、今年は1500億円が投入されている。この国費は決してナショナリズムを輸出するためのものではない、と明確にコメントするべきなのである。

日本の多くのメディアはジャパンエキスポやこの種の日本文化のイベントについて取材し報じているが、多くは「コスプレで日本のコンテンツに夢中になっている若者」を紹介するもの。そのためか、海外における日本文化の優位性を信じる偏狭な愛国主義のようなものがはびこってきたように思える。そうした雰囲気に、経産省も同調しているのだろうか。

日本政府が主催しているわけでもないイベントに韓国企業のパビリオンが入っているだけで、それを「異様な光景」と断じる今回のような報道は、偏狭な愛国主義を煽るもので、それこそが「異様な光景」だ。69回目の終戦の日を機に、冷静な議論を深めたいものである。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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