これから待機児童数は減少し続けるのでしょうか。そもそも待機児童数が減少した理由にはどんなことがあるのでしょうか。
もちろん自治体の努力は一番に挙げなくてはならないでしょう。この5年間で、都内の認可保育園(保育所型認定こども園を含む)の数は1,135か所、定員で8万3030人分増えています。これに対する認可保育施設への利用申込者数の伸びは5年間で5万8182人。全体では整備した分がニーズ増加分を上回っていることになります。
東京都の就学前児童数は4年前から減少していますが、認可への利用申込者数は増加傾向が続いてきました。しかし、その増加率は鈍ってきており、2021年4月は前年から1,035人増で増加率は1%程度。5年前の7.2%からはかなり低下しています。
こういった全体像からすると、保育ニーズの増加は続いているものの伸びは鈍化しており、そこへ待機児童対策が追いついてきたということが言えそうです。
ただし、今年度の激減の原因は、それだけではないという見方もあります。
国への報告では、利用申込者数が想定したほど伸びなかった原因として、コロナ感染を懸念した利用控えがあったと答えた市町村が多数に上りました。コロナ感染拡大が続く中で、保護者に子どもを預けることへの不安が高まり、育児休業を延長したり、仕事を断念したりした人たちが多かったのです。とすれば、コロナ禍が収束すればその分の利用申込が増加する可能性もあります。
また、待機児童が大幅に減少したという報道は、これまで保育園をあきらめてきた層に「保育園を利用できるかもしれない」という期待をいだかせ、入園申込みに向かわせるかもしれません。
子育て家庭の安心感はまだ遠い
このような状況をふまえ、多くの自治体が待機児童対策への力に入れ方を変化させていく可能性があります。これまで積極的に進めてきた新園開設のいったん休止を決めた自治体もあります。保育園をつくりすぎると、充足率が下がって、経営が苦しくなる園が出てくるという心配もあるでしょう。しかし、地域にもよりますが、首都圏などの多くの地域で、保護者から見て「これで十分」という状態にはなっていないと思います。
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