「愛と恋の違いとは?」キリストが導いたその正解 日本人は「愛」本来の意味を誤解していた

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当時の日本では、「愛」の字は、仏教における「愛欲」「愛着」の意味で使われることが多く、欲望や執着といった煩悩をイメージさせる言葉でした。愛欲や愛着というのは自己中心的なものであり、「見返りを求めない愛」とは、まるで真逆です。

そこで宣教師は、日本語でもっとも近い言葉として「御大切」という言葉を当てました。相手をただただ大切に思う気持ち。大事にしたいという気持ち。この訳し方のほうが、キリスト教における「愛」のことを、日本人として理解しやすいかもしれません。ちなみに、ギリシア語には「愛」を表現する言葉がほかにもあり、アガペーのほかに、「エロース」だったり、「フィリア」だったりがあります。

「エロース」は、日本語では、性愛と訳されます。自分にないもの、不足しているものに憧れ、求める気持ちのことを言います。男性と女性が惹かれ合うのは、まさにこのエロースです。

持っていないものを強く求めるという意味においては、お金持ちになりたいとか、いい大学に入って尊敬されたいと考えるのも、広い意味では、「エロース」の力が働いています。

もう一つの「フィリア」は、友愛と訳されます。これは、友達を信頼し、大切に思う気持ちです。ほかにも、同じサークルの仲間や地域の仲間などの間で生まれる信頼関係も、フィリアと言えるでしょう。

愛には、このようにいろいろな形があると、古代のギリシア哲学では考えられていました。

隣人だけでなく、敵まで愛せ

さて、キリスト教における「愛」の話に戻りましょう。新約聖書は、神の愛(アガペー)にならって、人間もまた、「無償の愛」を隣人に実践するように求めています。「隣人を自分のように愛しなさい」ですね。

イエスは、さらにその愛の実践を、このように言っています。

「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」(マタイによる福音書5.44)

隣人どころか、自分の敵まで愛せ、と言うのです。自分を陥れてくるような敵を、あなたははたして愛することができますか? なかなかできませんよね。

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