認知件数増いじめ問題解決に「協働」という視点 「構造化」のアプローチで問題の突破口を探る
竹之下倫志:まず、私たちが目指しているのは「いじめを取り巻く人や団体と協働して問題にアプローチする」ということです。
PITとして活動するなかで、たとえば自分の子をいじめから守る活動をしたところ地域から孤立してしまった母親や、いじめ問題解決のために動いた結果、保護者から嫌われてしまう教員などをたくさん見てきました。
みなさんには「子どもたちを守りたい」「いじめをなんとかしたい」という共通の想いがある。ですが、一人ひとりはがんばっているのに、孤立や対立構造が起きてしまったりするケースも少なくないんです。
いじめ問題を解決したいと考えている人たちが一緒に動くことができず、個人が摩耗していく。そこを整えてみんなの方向性が揃えば、いじめ問題の構造を変えられるのではと考えています。
関係者同士でいがみ合ってしまったら
安部:いじめに限らず、社会問題解決に向けて動こうとするとき、関係者同士でいがみ合ってしまうことはよくありますよね。目的は同じなんだけれど、手法やこだわるポイントが違うと、殴り合いのようになってしまうことがある。
竹之下:保護者と教員が協働するためには、お互いが対立しないために状況を把握し、「何ができて何ができないのか」「なぜそうなっているのか」というベースラインを理解することが大切だと思います。
そこを踏まえ、対立する関係者同士で対話し、目指せる目標に向かって走っていくのが理想的だと考えています。土壌づくりと対話の場を、いかにつくっていくか。
たとえばPITでは、相互理解を深めていくために、教員が見ている視点や感情をそれ以外の人が知る機会や、いじめで調停になったときに、立場ごとにどういう思考に陥り、対応をしてしまいがちか体験する研修などを実施しています。
またマクロの視点から、いじめや学校周辺の課題を一枚の絵にして全体像を把握し、「こういう構造にはまっているから動けない」など、多層的に課題があると知る機会も大切にしています。
定例会でも構造をいろんな視点から学術的にも研究していて、現場では共有の理解として使ってもらい、対話をスムーズにしていける材料にしていく。そしてマクロ的には、修正すべき仕組みの部分を把握し、政策等につなげていくことを心がけています。