横浜の市電、なぜ「独立採算」で保存できるのか かつての市内主要交通、車両計7両が保存館に
一方、収益事業としては市営地下鉄構内のコンビニ運営や駅業務の受託事業などを行っている。現在、交通局協力会が運営するコンビニ店舗としては、あざみの駅、新横浜駅、横浜駅構内などに11店舗がある。また、駅業務の受託事業では「ブルーライン10駅、グリーンライン7駅の計17駅の業務を受託しており、これらの駅では、助役は交通局の職員だが、業務主任と駅員は当会の従業員が担っている」(武藤氏)。このほか、コインロッカーやテナントの運営、地下鉄の中吊り広告の掲出作業等も受託しており、こうした収益事業で稼いだお金の一部を保存館の運営に充てているのだ。
交通局協力会の2018年度の収支を見ると、経常収益約40億3300万円、経常費用約39億2300万円となっており、「現在は補助金は一切いただいておらず、完全な独立採算」(武藤氏)で経営が成り立っている。
しかし、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大で、他の交通事業者同様、横浜市営交通の経営も苦しく、地下鉄事業が12年ぶり、バス事業が11年ぶりの経常赤字となった。当然のことながら市営地下鉄駅構内の流動客数も減少し、交通局協力会の構内営業事業等にも少なからぬ影響が出ている。こうした状況が長く続けば、市電車両の保存にも影響が出かねない。
歴史を正しく伝える難しさ
武藤館長は、今後の保存館の運営について、「史実に沿って、市電の正しい姿を伝えていきたい」と話す。
しかし、車両塗装の再現1つをとっても、難しいことが多々ある。例えば、同館の500型は昭和初期にデビューした当時の塗装を施しているが、これは横浜市電研究の第一人者であった故長谷川弘和氏(1925年生まれ)の記憶を頼りに、1975年に塗装したものだ。当時も白黒写真しかなく、塗料の配合表なども残されておらず再現に苦労したというが、現在は昔の市電の姿を知る人が少なくなり、史実を正しく伝えるのはさらに困難になっている。
また、1500型は現在、コーヒーブラウン色の塗装を施しているが、1500型がこの色に塗られたという史実はなく(1150型2両が試験的にコーヒーブラウン色に塗装されたことがある)、鉄道ファンなどからは、「実際に使われた色に塗り直してほしい」との意見が寄せられている。武藤館長も着任当初から課題として認識しており、今後は計画的にこうした課題にも取り組んでいきたいという。
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