感染リスク承知で「ごみ収集」清掃員の悲壮な覚悟 当たり前の暮らしを支えてくれる人がいる

✎ 1〜 ✎ 174 ✎ 175 ✎ 176 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした状況になると清掃車に積んであるかき板を利用してなるべく触れないように拾い上げバケットに入れるのであるが、それは時と場合による。

清掃車が停車しても通行に支障が出なければゆっくりと作業ができようが、清掃車の停車により付近の通行が妨げられる場合には、なるべく早く片付けを行う必要がある。その際は仕方なく手で拾い上げてバケットに入れる。グローブをしているので素手ではないものの、感染への恐怖を感じる瞬間である。

以上のような作業によって清掃職員は感染リスクと背中合わせでごみ収集を行っているが、作業を終え事務所に帰った際には手を消毒してうがいをすることを心がけている。よって今のところ、収集作業自体により新型コロナウイルスに感染したという話は聞かれない。

コロナ陽性者発生施設のごみ収集の過酷な実態

2021年1月11日、収集業務体験を終えて滝野川庁舎に戻り洗身の準備をしていたときに緊急会議を開催する館内放送が流れ、清掃職員一同は3階の会議室に集まった。そこでは統括技能長より、管内の老人ホームでコロナ陽性者が発生したため、通常の収集はやめ特別な体制を整え、感染対策を施しながら収集業務を行っていくとの説明がなされた。

その詳細は以下のとおりである。すなわち、「通常は小プで収集を行っているが、プレス機で袋が破けて中身が出る危険性があるため、感染確率を低く抑えて収集を行いたい。そのため特別に『軽小型ダンプ車』(以下、軽ダン)を用意して袋が破れないように丁寧に積み込んでいく形で収集を行う。

作業には25人程度いる主任の中から交代で担当者を割り当てるようにする。老人ホームには排出するごみの袋を二重にし、消毒を徹底するように伝えている。危険性はかなり低いと思うが万全ではないかもしれない。

作業を担当する主任には別途ゴム手袋を用意するので、作業終了後はすぐに処分してほしい。車の中には消毒液を用意する。作業終了後に戻ってきたらすぐに洗濯して洗身してもいい」といったアナウンスがあり、翌日から1月末まで特別の体制をとり、週2回の収集に当たるようになった。

隣に座っていた清掃職員の方に尋ねると、「当該老人ホームからは通常は40袋ぐらいオムツが出てくる。今回の作業では100袋前後積むかもしれない。これまで小プに積んでいるときに汚物をかぶった清掃職員がいる」と教えていただいた。

当該職員の方はかなり不安を感じており、普段の収集でもリスクを感じながら収集作業を行っているため、今回の案件はかなりリスクが高い作業と受け止めていた。

筆者はこの話を自分に置き換えて聞いていた。正直なところ自らも進んで行きたくはない気持ちであった。一方で、公務という仕事を全うする清掃職員の気概に近づきたい気持ちもあった。結果そちらが勝り、あえて収集の志願をさせてもらい、シフトに割り当てを行っていただいた。

しかし、先述(「『ごみ収集』感染リスクと隣合わせ過酷な現場ルポ」)した滝野川庁舎の清掃職員のコロナウイルス感染により登庁が許されず今回の作業体験は実現しなかった。後日収集作業に当たった清掃職員の方から現場の状況を聞いたところ以下のとおりであった。

作業当日は、2人の主任が軽ダンで老人ホームに行き、出されたオムツを積んでいった。1人は荷台に乗り、もう1人が下から渡す形で積み込み作業を行った。軽ダンへの積み込みが終わるとすぐに北清掃工場に向かい、感染ごみ用に準備された1番ゲートからごみバンカに入れていった。

次ページ総量約1トン分のオムツが運び込まれた
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事