アフガン撤退に見えるバイデンの「血の国境」論 民族・宗教で住み分けた国境線で平和は訪れるか

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ピーターズはこの記事で、さまざまな民族や宗派が共に暮らし、婚姻し、交ざって暮らす地域に民族や宗派に公平性のある国境を新たに引き直すことが不可欠であると主張。バグダッド陥落は新たな国境線を引き直すまたとない機会だったのに、好機を逃したとアメリカ政権を非難した。

この主張は2006年6月に出版された同氏の著作『戦いを絶対にやめるな(Never Quit the Fight)』に詳しく述べられている。

日本の中学校の教科書『新しい社会 地理』(東京書籍)では、国境を次のように説明している。

<国と国の境界のことを国境といいます。いろいろな国の国境線をたどると、おもに 次の2つの決め方があることに気がつきます。(1)山や川、湖、海などの自然物を利用した国境線、(2)緯線・経線などを利用した人工的な国境線。(1)の国境線を「自然的国境」、(2)の国境線を「人為的国境」といいます>

「血の国境」で分ければ紛争はなくなるか

ピーターズはこれに、民族や宗教によって住み分けた国境線である(3)「血の国境」を加えたというわけである。その結果、現行の国は分割されたり、合併したり、領土が増えたり、減ったりする。国がなくなることもあれば、残ることもある。さらに、新しい国家として誕生するものもあるとした。

ピーターズの主張によれば、中近東の絶え間ない紛争と緊張は、日和見主義のヨーロッパ人が恣意的に引いた現在の国境の当然の帰結であり、不公平な国境が許容範囲を超える緊張を生み出す理由なのだ。したがって、この地域の混乱を理解するキーワードは、イスラムではなく、今はタブーで触れることはできない国境線にあると主張する。

そして中近東は異なる民族集団や宗教集団が種々雑多に暮らし、結婚もして混血しているが、既存の民族同士の公平性を保つためには、国境を見直し、新たな国境線を引き直す必要があると訴える。

「国境線の見直しに反対」「見直しは絶対に不可能」という意見に対しピーターズは、5000年前から繰り返される「ジェノサイド」を引き合いに出し、ジェノサイドは「血の国境」を取り戻そうとするから起きるのだと反論する。よって、アラブ人とユダヤ人の絶え間ない戦いは生存競争ではなく、国境をめぐる対立であり、国境が最終決定しないまま不安定であるかぎり地域の安定は望めないと、中近東に以下のような新たな国境を提案している。

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