爆上げ海運株は高利回り株の魅力を維持できるか 今年度は今なら7~8%の配当は「当たり前」

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さて、このように海運各社は足元で大幅な増配を発表したが、配当性向でみると20%前後でとどまっており、決して無理な配当を計画しているわけではない。

今後、海運株が高配当株として注目され続けるには、少なくとも以下の3つが必要だ。①明確な株主還元策の方針がはっきりしていること、②財務体質が健全(自己資本比率が高い)な状態を続け、減配を避け、増配を長期にわたって続けていくこと、③具体的な配当性向としては、ディフェンシブセクターで他に資金用途がなければ配当性向50~100%でもいいが、海運業のようなシクリカルセクターでは20~30%、最大50%が限界だろう(あくまで個人的な見解だが)。

今後の海運株の行方は?

前回もふれたが、改めて今後の海運株の行方について、以下の4つの論点を挙げたい。
① これまで筆者がふれたように今後もポジティブな要因が継続するか
② 世界的な港湾混雑・輸送遅延(スエズ運河の座礁事故など)による運賃高騰は一時的なのか「ニューノーマル」なのか
③ 現状の船不足はいつ解消されるのか(2022年以降、新船の造船により船不足が解消されるのか。古船を廃棄して新船に乗り換えるリプレース需要がどれだけあるか)
④ 米中冷戦による船舶貿易の低迷リスク(頭の片隅に置く必要がある中期的リスク)は大丈夫か

足元で海運株は急騰したが、それでも会社予想ベースの今期予想PER(株価収益率)や今期の予想配当利回りなどは、TOPX対比で、まだ割安にみえる。3年、5年、10年後も業績が堅調に推移するなら、中長期で株価が評価される余地は十分にある。逆に利益成長の勢い(モメンタム)低下、さらには業績悪化の可能性が高まった場合は、株価が急落する可能性もあるので、注意したいところだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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