美容サロンも「FREE」の時代に?《それゆけ!カナモリさん》
■顧客を囲い込むための戦略
長引く景気の低迷は、消費者の節約志向を加速させ、「贅沢」なものだけでなく「不要不急」の需要を根こそぎ低迷させた。美容サロン業界はその直撃を受けた業種の一つだといえるだろう。顧客数そのものが大きく減る以上に、来店・利用頻度が低迷。髪を整えに来る間隔が長くなることが業界全体を冷え込ませているのである。上場企業である株式会社田谷の22年3月期の決算短信を見てみると、大幅な減収減益になっていることがわかる。田谷の田谷和正社長は日経MJのインタビューに対して、「景気低迷の影響で客の来店頻度が低下している。2009年度は08年度に比べ、既存店の入客数が1.2%減り、売上高は3.6%減少した。美容業界では来店機会を増やすため、割引など価格競争が激しくなっている」とコメントしている。
業績が落ち込んだときにどうするのか。極めて当たり前な話だが、「利益=売上げ−コスト」である。昨今、コスト削減の努力にはどの企業も血の出る思いで取り組んでいる。しかし、コスト削減の努力にも限界がある。とすれば、売上げそのものを回復させることが欠かせない。「売り上げ=客数×客単価×リピート率」である。田谷の施策は美容業界にありがちな、穴の空いたバケツで水を汲むような新規顧客獲得に偏重した施策を改める狙いがあるのである。
消費者が商品・サービスを認知してから購買行動を起こすまでの態度変容を表すモデルとしてはAIDMAが有名だ。A(Attention:注目)→I(Interest:関心)→D(Desire:欲求)→M(Memory:記憶)→A(Action:行動)である。しかし、AIDMAの問題点は、基本的に1回1回の購買までしかとらえていないことだ。初回購入までの設計を行うのであれば十分だが、リピート促進の施策を組み込めない。また、有料・無料のどちらの場合もあり得るが、初回の購入が「お試し」であった場合、再購入させ、さらにロイヤル顧客化するまでのプロセスをカバーしていないのである。
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