菅首相、緊急事態宣言延長で「9月解散」困難に 自民は本格総裁選に、11月28日総選挙説も浮上

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その一方、9月上旬になっても全国的な感染爆発状態が続いている場合、政府も当然、9月12日という宣言の期限も9月末以降まで再延長せざるをえなくなる。

その場合、感染専門家が主張する国民の外出制限や飲食店の営業停止のための強制的措置を検討する与野党協議が必要となる。立憲民主党の枝野幸男代表らは「挙国一致でのコロナ対応のための政治休戦」を主張しており、与党内にも同調論がある。

仮に9月の政治休戦が実現すれば、国会を開かない場合は10・17任期満了選挙に、開いた場合は解散時期が10月上旬以降となり、投開票も11月にずれ込む可能性が高まる。菅首相は「11月の早い段階での希望者全員のワクチン2回接種完了」を目指しており、それが11月28日投開票説の根拠となりつつある。

菅首相の再選戦略は不透明に

もちろん、9月に新総裁が選ばれれば、解散を含めた政治日程も一変する。新総裁が決まれば、速やかに国会での首相指名・組閣を進め、さらに所信表明演説や各党代表質問をこなすためには「最低でも10日間程度が必要」(衆院事務局)とされる。

その場合、新首相が10月上中旬に解散すれば、投開票日は11月7日以降となる公算が大きい。もし、新首相がコロナ対応のための大型補正予算を国会に提出すれば、「成立は任期満了ぎりぎり」(同)となり、こちらも結果的に「11・28選挙」となる可能性が出てくる。

こうしてみると、菅首相の「解散での衆院選勝利と総裁再選での続投」という当初の戦略は「とても筋道どおりには進まない状況」(自民長老)に陥りつつある。菅首相は宣言の拡大と延長方針を固めた16日夜の官邸でのインタビューで「まずは今の目先のことを解決に向かって全力でやるのが私の責務」と語った。

17日夜の記者会見で記者団から「棒読み批判」をされると、気色ばんで反論。それに先立つアフガン情勢に関する応答では、手元の答弁メモの「情勢」を「情熱」と読み間違う場面もあり、会見場内に失笑が漏れた。

菅首相は今年3月28日を最後に完全な休暇を取っていない。会見などでの不安定な言動も「疲労困憊の所為」(官邸筋)とすれば、今後の政局展開によっては、一部週刊誌などに見出しが躍る「パラ閉幕直後の退陣表明」も完全否定できなくなりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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