どこまで公費?意外と知らない「皇室の財布事情」 2021年度の皇室費予算は124億円、その内訳は?

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明仁天皇の「即位の礼」(1990年11月12日)を、政府は国事行為にあたるとして総理府予算を充てました。これにつづく10日後の大嘗祭は総理府予算でなく、宮廷費で賄いました。即位の礼は総理府予算、大嘗祭は宮廷費と分けたところに政府の苦心がありました。

政府の見解は「大嘗祭は宗教上の性格を有することは否定できず、国事行為にはできない。しかし『一世一度の重要な皇位継承儀式』として公的性格を認め、宮廷費からの支出は政教分離原則に反しない」というものでした。

つまり「新嘗祭」は私的な皇室行事ですが、「大嘗祭」は歴史的にみて即位の礼と一体のもので公的性格もあることから、皇室の公的な経費である宮廷費を充てるという理由でした。宮廷費は公費ながら、あくまで皇室の枠組み内の予算で、即位の礼のように国費そのものである総理府予算は充ててはいない、との理屈です。

これに対して1990年はキリスト教団体や労働組合などから懸念表明が出され、憲法が定める政教分離の原則に違反するとして多くの訴訟が起こされました。しかしいずれも最高裁で「政教分離の原則に反しない」と却下されました。

2019年の大嘗祭は宮廷費から支出

政府は2019年の「大嘗祭」も前例を踏襲し、宮廷費から支出することを決めました。

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これより前の2018年11月、秋篠宮さまは53歳の誕生日を前にした記者会見で、「(大嘗祭は)皇室の行事として行われるもので、宗教色が強い。それを国費で賄うことが適当かどうか」「宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに、やはり内廷会計(内廷費)で行うべきだと思っている」と述べられました。

ただ皇嗣となられた1年後の2019年11月の会見では、「昨年と気持ちは変わらない」と述べられましたが、抑制的でした。皇嗣という責任ある立場になられたことが関係しているのではとみられています。

「大嘗祭」を予算上、どう仕分けるかは政治もからんで難しいものがあります。ただ皇室の祭祀を研究しているリベラルな学者の中にも「歴史的にも大嘗祭は即位と一体となった儀式で、宮廷費から支出されるのは妥当だと思う」という意見があります。

2019年11月14日に行われた「大嘗祭」は、24億4300万円が宮廷費から支出されました。経費抑制に努め、1990年の「大嘗祭」より2億円強の増加にとどまりました。

西川 恵 毎日新聞社客員編集委員

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にしかわ めぐみ / Megumi Nishikawa

長崎県出身。1971年毎日新聞社入社。テヘラン、パリ、ローマの各特派員、外信部長を経て専門編集委員。2020年4月までの18年間、国際政治・外交・文化についてのコラムを毎週朝刊に執筆。2014年から現職。公益財団法人日本交通文化協会常任理事。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、1997 年度サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮社)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、『知られざる皇室外交』(角川新書)など。近著に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)。共訳に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店)。仏国家功労勲章シュヴァリエ。

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