どこまで公費?意外と知らない「皇室の財布事情」 2021年度の皇室費予算は124億円、その内訳は?

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・宮廷費

さて3つ目の宮廷費は宮内庁が経理する公金で、2021年度は118億2816万円でした。その主要な内訳は、儀典関係費(9億7500万円)、宮殿等管理費(11億4800万円)、皇室用財産修繕費(15億5100万円)、皇居等施設整備費(38億6200万円)などです。

儀典関係費は両陛下に関連する儀式や、国賓の来日(年2回を想定)や、その他の賓客の接遇、また天皇、皇后両陛下や皇族の外国ご訪問、地方へのご旅行などに支出されます。とくに国賓の場合は、日本側の招待となるため、迎賓館での滞在費用や晩餐会、移動費用などかなりの額になります

しかし2021年度の儀典関係費は前年度(13億1100万円)と比べて3億4000万円近く減っています。これは新型コロナ感染問題で、来日する外国の賓客の激減や、皇族方が外国をご訪問する機会もほとんどないことを見越してのことだと思われます。新型コロナ問題で春から自粛がつづいた2020年度も儀典関係費は消化しきれなかったでしょう。

宮殿等管理費は皇居宮殿をはじめとした施設の維持管理で、新浜鴨場や埼玉鴨場、御料牧場なども入ります。また天皇陵など全国に散らばる陵墓は460カ所に上り、100人を超える陵墓守の費用もここから出ます。

皇室用財産修繕費は国が皇室の用に供している財産の修繕費です。皇居の土地(115万平方メートル)をはじめ宮殿、御所などの建物、さらには那須や葉山、須崎などの御用邸、御料牧場、鴨場、さらには京都御所、桂離宮、修学院離宮、正倉院などは国有財産で、いうならば皇室が借りているものなのです。その修繕は宮廷費で行われています。

内廷費か宮廷費か、意見が分かれる「大嘗祭」

こう見てくると、内廷費と皇族費はいうならば天皇家と皇族のプライベートなお金、宮廷費は公的なものに支出するお金といえます。ただ支出目的によっては内廷費で出すのか、宮廷費で出すのか意見が分かれることがあります。これが世論を巻き込んで顕在化したのが1990年と2019年の即位の礼の後にもたれた「大嘗祭(だいじょうさい)」でした。

天皇は毎年11月、その年に収穫されたコメなどの穀物を皇祖神などに供え、国の安寧と五穀豊穣を祈る宮中祭祀「新嘗祭(にいなめさい)」を執り行っています。これは神道形式で行われます。新嘗祭のうち天皇が即位して最初に行われる「新嘗祭」を「大嘗祭」と称し、7世紀後半に整備されたといわれます。毎年の「新嘗祭」の費用は内廷費から支出されているのに、「大嘗祭」は宮廷費で賄われています。どういう理屈なのでしょう。

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