テレビとYouTube「二刀流芸人」の"ネットの流儀" さんまにとって「YouTube=素人の領域」だが…

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こうした流れを作ったと言えるのが、キングコング・梶原雄太である。梶原と西野亮廣のコンビであるキングコングはNSC在学中から頭角を現し、M‐1決勝にも早々と進出したお笑い芸人のエリート。『はねるのトびら』などバラエティー番組のメインとしても活躍した。

そんな梶原が2018年8月に開設したYouTube公式チャンネルが「カジサックの部屋」だった。2019年7月にはチャンネル登録者数が100万人を突破。このチャンネルで中心になったのは、妻と子どもが出演して仲良く料理を作ったりゲームをしたりするような、梶原家の日常を映したものだった。そこにほのぼのとした笑いはあっても、プロの芸人がやるような笑いはない。そこからは、テレビとネットでは求められるものが違うという、はっきりした意識がうかがえる。

かまいたち・山内の「YouTubeの流儀」

かまいたちの山内健司が、芸人とYouTubeとのこうした関係の変化について、2020年8月22日放送の『ゴッドタン』(テレビ東京系)で興味深い見解を語っている。

『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』(ちくま新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

かまいたちはM‐1の決勝に進出するなど実力派の芸人であり、いまや数多くのテレビ番組に出演し、自身の冠番組も持つ屈指の売れっ子である。その一方で、YouTubeにチャンネルを持ち、本人いわく「芸人ではなくユーチューバー」として動画制作に力を入れている。この日の番組でも、他人の動画をまねてはいけないといった、「“俺芸人なんで”っていうとがりはまったくいらない」「YouTubeはみんながやってることを自分もやるのがいい」と断言していた。

この山内の考え方は、先述のフィッシャーズの「英語禁止ボウリング」に通じるものだろう。そのことを、いまが旬のお笑い芸人が堂々と主張するところが興味深い。芸人としての実績をテレビで残す一方で、ネットの流儀にしたがってそこでも結果を残そうとする“二刀流”の芸人が活躍する時代が始まろうとしているのである。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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