東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か

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競馬である。今回は手短に。

馬主のなり方、馬の選び方について、前回は「要は母親だ」と言ったが、今回は補足として少しだけ男の話、つまり父親、種牡馬の話をしよう。

馬を買うとき父親である種牡馬を選ぶ「4つのポイント」

ポイントは、ブランドに頼らないことであり、見かけに騙されるな、ということである。

まず、大活躍して人気のある馬の初年度は避けよ。みんなが、あの大好きだった馬の子供が欲しいと思うから、過剰人気で割高である。

第2に、死んでしまって「ラストクロップ」、つまり最終世代という馬もやめよ。明らかに割高であり、今年のセリでディープインパクトを買うのは素人である。しかも、種は若いほど新鮮で力強い。いいことはないのである。

第3に「イケメン」はやめろ。社台グループ、いや日本の馬産を世界一にした立役者サンデーサイレンスをアメリカが売ってしまった一つの理由は、サンデーサイレンスがみすぼらしく貧相で真っ黒(青鹿毛に分類される)な小さな馬だったからである。同期のライバルだったイージーゴアが筋骨隆々で、アメリカ人の大好きなパワフルかつ美しい馬、しかも彼ら好みの栗毛、と対照的だったことが大きかった。結果は、イージーゴアは早死し、後継種牡馬も出ず、血は途絶えた。サンデーサイレンスはご存じのとおりである。

第4に、獲得形質(生後に獲得した能力)は実は遺伝するというのが、私の偉大な発見だが(これはまたの機会に)、しかし、やはりDNAが重要で、表向きの活躍に騙されてはいけない、ということだ。例えば、大きく育った牡は、体格的に有利で活躍するが、遺伝子を最大限発揮しきっており、それが上限だ。一方、体に恵まれなかったが、それでも活躍した馬は、能力を秘めている。ステイゴールド、ドリームジャーニーなどが例である。

以上から、一つだけ具体的な推薦をしておくと、今年はキタサンブラック産駒については見送り、シルバーステート産駒に賭けることを推奨する。前者は活躍しきっており、シルバーステートは3歳で長期休養、4歳で復帰したものの「不治の病」と言われる屈腱炎で引退して、大きなところは勝っていない種牡馬だ。だが、まったく底を見せていない。すでに初年度の産駒は多くが勝ち名乗りをあげており、後続の馬たちも産地でも評判になっている。出資するなら今年しかないだろう。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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