東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か

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インデックスファンドは、いちいち個別の企業を丁寧に分析する暇はなく、エンゲージメントと称して経営者と対話するというが、結局は株主議決権行使アドバイス会社に従うだけだ。さらにこのアドバイス会社も結局は客観基準で、形式的な議論に終始しないと網羅的に一貫性のあるアドバイスはできないから、要は、形式的な判断になる。

「大機関投資家の離反」を恐れた改革?

これらの結果、世界の大規模機関投資家たちは、インデックスに含まれるほぼすべての会社に投資し、ガバナンスは不在になりがちだ。お茶を濁すために、議決権行使をするが、それもブランド活用となり、議決権行使アドバイザーも客観基準という名の形式基準、イメージ基準で投資するから、投資家サイドは誰も個別の企業の分析をしなくっているのに等しいのだ。

これが東証へのインデックス改革の要求へと結びつく。「俺たち投資家は忙しいんだ。だから、そのまま投資して儲かるようなインデックスを作れよ。そうでなければ面倒だから投資しないよ。TOPIXにも、さらには日本そのものへの投資を止めちゃうよ」ということなのである。だから、この恐怖におびえて、東証と日本政府は一丸となって、TOPIXの見直しを行おうとしているのである。

つまり、私に言わせれば、市場構造改革という名の下に行われようとしている今回の改革とは、ガバナンスとは無関係(それどころか改悪)であり、180度誤った方向の変更なのである。

東証、証券取引所は誰のためにあるのか。誰のどんなことのためにあるのか。この2つの最重要点について、根本的に誤っているのだ。

第1に、取引所は、資金調達をして経営を発展させようとしている企業と、それに対して出資をする投資家の保護のためにあるはずだ。今回の東証改革は、どちらの役にも立っていない。

取引所の役割は、第1に企業の資金調達を助けることである。そのためには、良い投資家を呼んでくることが必要である。よい投資家とは誰か。真の長期的な企業価値を理解し、その最大化を追求する投資家である。結論から言えば、多くのインデックス投資家は、それには当たらない。ましてやナノセカンドの高速取引をするトレーダーは問題外である。本来、東証がやるべきなのは、長期に企業とともに企業価値を最大化する仲間となる投資家を増やすことである。

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