取引所の第2の役割とは、企業へ出資する投資家を保護する役割である。投資家が持つリスクをとって出資する意欲を阻害しないように、投資対象となる企業を監視する、ということである。これこそが、ガバナンスである。
東証が企業のガバナンスに責任を担うことが重要
例えば、硬直的な制度は東芝の大混乱を招いた根本的原因のひとつにもなった。すなわち「帳簿上債務超過が2期連続なら上場廃止」という形式基準一辺倒で、2兆円以上の価値が確実にある子会社を実質基準で判断せずに上場廃止を迫った。結局、血迷った東芝は、自ら「もっとも望まない投資家」を呼び込んでしまった。
このようなことが起きないようにすることが最重要である。企業の健全性を実質的に東証が判断する、そのような手間、暇、コスト、そして実質的に判断するという、責任を負ったガバナンスを東証が自ら担うことが必要である。
しかし、そのような役割にはしり込みをしておきながら、プライムというあたかも東証が保証するブランドをインデックス投資家に提供するようなことは積極的に行おうとしている。これは根本的な間違いではないか。
さらに、このプライムの基準は問題ではないか。第1に、そもそも企業を規模でプライムとスタンダードに分けていることだ。「大きければよい」という時代は19世紀に終わった。量より質である。だから、流通時価総額100億円以上ならプライムという高級市場でそれ以下なら普通のスタンダード、というのはおかしい。
第2に、流通株式という基準を用い、さらにこの基準を従来から変更していることである。要は、売買できる株式だけを時価総額の算定の中に入れるということである。株式を上場しても、創業者が自分や一族で保有している分や、大企業が子会社を上場した場合に、大株主として残ったような場合には、普通の状況では、彼らの持ち分は市場に出てくることはないから、市場に流通する株式の実質割合は低いということになる。
このときに、このような類の株式は除いて、残りの株式だけで、その企業の時価総額を算出するということである。その結果として、流通時価総額が100億円を超えるかどうかで、プライムに残るかどうか(現状東証1部の企業は)が決まる、ということだ。
そして、今回はおそらく、銀行などの政策保有株、企業の株式持ち合いなどを排除することを目的のひとつとして、流通株式の定義の変更を行ったのであろう。
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