東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か

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今回の「東証の市場改革」ではプライム市場創設などいくつかの柱がある。だが、筆者は企業統治の面から異議を唱える(撮影:梅谷秀司)

今回は東証のTOPIX(東証株価指数)改革についてとりあげたい。この連載でも山崎元さんが「東証の『プライム創設』で新TOPIXはどうなるのか」で指摘されていたが、私に言わせればこれはコーポレートガバナンス(企業統治)も金融も経済もわかっていない人々による改革だ。最重要である「2つの軸」で180度間違っているのではないか。今回は、それを説明しよう。

なぜ皆がTOPIXにこだわるのか

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

東証は市場再編およびTOPIXという株式指標の変更を2022年4月から実施する。

これまでの東証1部、2部、マザーズ、および取引所再編で統合されたジャスダック市場を、プライム、スタンダード、グロースの3つに再編するというものだ。

要は、統合後、そのままになっていたものをわかりやすく整理するというもので、これ自体はおかしなことではない。

おかしいのは、これにかこつけて出てきた下心だ。それはTOPIXという株価水準指標を改革するということである。理由は「市場区分が変わるから、いままでの東証1部すべてを含んでいたTOPIXという代表指標を変える」ということだが、実は本音の意図は逆だ。

TOPIXという指標の評判が悪いため、投資家たちのニーズに合うようにTOPIXを変えたい。そして日本株を世界の機関投資家にもっと買ってもらいたい。いきなり変えるのも唐突だから、整理がなされていない市場区分の市場再編をします、その結果、TOPIXも変わります、ということだ。

実際、市場再編はさほど話題に上らずに、TOPIXの変更にすべての注目が集まっている。再編が関係するのは、東証1部が選抜されて東証プライムに移行し、落ちるとTOPIXから外れるから企業も投資家も右往左往している。すべてはTOPIXなのである。

では、なんでそんなにTOPIXという指標が重要なのか。

それは、世界中の機関投資家が、株価指数をベンチマークにして投資・運用しているからだ。彼らに株を買ってもらえなければ株価は上がらず、取引してもらえなければ、取引所に手数料は入らず、取引所が立ち行かなくなってしまう。

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