痛快!イケア泉川さんの40歳キャリア 40歳は限界キャリアか、飛躍のチャンスか?

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運命の出会い、そしてロンドンでの子育て生活へ

40歳前後の読者なら大概の人は身に覚えがあると思うが、フットワークが軽く使い勝手のいい20代は仕事が多忙を極める一方で、プライベートでも結婚・出産などビッグイベントに遭遇しがちだ。

泉川さんも例外ではなく、駐在先のロンドンで結婚、妊娠、出産を経験した。お相手はパリ在住の日本人の自営業者。まるで映画のように、「空港でぶつかって知り合った」のだと言う。

「今から20年以上前の話ですから、子どもができたら、もちろん仕事は辞めなくてはいけないと思いました。でも、社長がさばけた人だったうえ、私に1年間研修させるという“投資”もしてしまっている。だから、できるだけ早く戻ってきてねと、マタニティ休暇を取らせてくれたのです」

泉川さんにとって、結果として、この「ロンドンでの妊娠・出産」が、この上ない幸運だった。

「夫はパリ在住のため、赤ちゃんの面倒を見られるのは、基本は私ひとりだけ。これでは、普通、破綻すると思うでしょ? それが、イギリスでは働くお母さんへの社会保障が手厚くて、全然、平気なのです。たとえば、女性が子どもを産んだら、地域がナニーさん(保護者に変わって子どもの面倒を見てくれる人)を30日間派遣してくれて、どうやって子どもを育てるか? お乳はどう上げるか? お乳が張ったらどうするのか?といった子育てや産後ケアにまつわるエトセトラを全部教えてくれるのです」

日本のように子どもを保育園に入れられず職場復帰できないなんて事態も、いっさいなかった。

「ライセンスを持ったベビーシッターさんが、面接して選べるほどウヨウヨいるのです。だからお母さんは子どもを自宅に置いたまま、職場復帰ができる。しかも、復帰後は授乳のために、ベビーシッターさんが会社に1日に4度も来てくれるんです。また、イギリスの会社は、母親の社員が授乳するために仕事を一時抜けることを、当たり前のように受け入れているのね。おかげで、イギリスでの子育てと仕事の両立は、さほどの困難を感じませんでしたね」

今でもなお、子どもの保育園入園問題や、職場復帰後の周囲の無理解に苦しむ日本のワーキングマザーからしたら信じられない話だろう。

だが、その後、日本に帰国した泉川さんは、ハードワークと子育てとの両立に、絶壁のような壁を感じずにはいられなかったと言う。

「息子は幼稚園に通わせたのですが、幼稚園って2時か3時には終わってしまうでしょう。ですから、その後は、無理を言って、園のバスで24時間保育の保育園に送り込んでもらっていたのですが、そこに私が息子を引き取りに行けるのは、下手をすれば夜の9時、10時。当時のお給料は、ほぼ全部子どもの保育費で終わってしまい、手元に残らないくらいでした。それに、息子にもこんなに遅くまでひとりでいさせてゴメンねという罪の意識を感じて、つらかったですね」

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