「マツコ&有吉」人気の裏に"2層構造”? 深夜にテレビを見ない層が『怒り新党』にハマる理由

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「オレなんか、さんざん、山の中で土食ってたわけじゃん? ガキの頃から。そんなヤツが今さら除菌って言ったって(菌に)負けるわけないじゃん!」「オレ、田舎で、ぶわーーんっていう農薬の中、『忍者だ!』ってやってた人だから、そんなもんさ、負けるわけないじゃん!」

うわ! この人、いつまでも少年だわ! 有吉さんは、番組で子ども時代の話をするのですが、それがどれもこれも、男の少年心をくすぐるものばかり。これで前半の男性視聴者を食い止めているのだと思いました。

女性には理解不能、男の“マニアック心”がさく裂

こうしたマツコさんと有吉さんのスタジオトークが終わると、後半は、「新・3大○○調査会」。このコーナーはビデオ構成で、特定のテーマに対し、その分野の有識者がテーマにおけるトップ3を決定し、政見放送風に紹介していきます。

正直、女性には、面白さがよくわからないコーナーで、筆者も前半だけで今回のコラムを書こうと思いましたが、あまりにも男性から「それはこの番組の本質をわかっていない」と非難ごうごうだったので、書くことにしました。

番組でよく取り上げるのが、スポーツ選手。最近では、宇良和輝(学生相撲)、北桜(相撲)、山本和範(プロ野球)、ガエル・モンフィス(テニス)、平仲明信(ボクシング)、マーティ・ブラウン(プロ野球)など、熱心なファンしか注目しないような人たちの偉業、特技、輝いていた瞬間などを、特集しています。男性にはこのマニアックさがたまらないようです。

スポーツ選手だけではなく、食べ物、テレビ番組、秘境なども取り上げますが、地上波のゴールデン番組では絶対に取り上げないテーマばかり。秘境探検、洞窟探検、川滑りなどは、男性が少年時代にやっていたこと(あるいはやりたかったこと)をそのまま再現しているだけじゃないかと思うほど。絶対、このコーナーを制作しているのは男性だろうと思いました。

前述の大学教授によれば、これが「男のマニアック心」をくすぐるのだそうです。確かに、男性って妙な分野を一点突破で「掘り続ける」傾向にあります。テレビ業界でも出版業界でも、マニアック企画を山ほど出す人が多く、女性はぽかーん。おそらく、NHKの「あさイチ」の企画会議で、新・3大のような企画を出したら、「女性には興味ないわ!」と全部ボツとなってしまうことでしょう!

女性の心を癒すお悩み相談と、男性の少年心とマニアック心をくすぐる「新・3大」。相異なる視聴者を持つ2つのコーナーの2段積みですが、男女ともに何となく両方見てしまう……。マツコさんと有吉さんがずっと変わらなければ、長寿番組になる予感がしています。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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