名古屋市長「メダル噛み」が余りにもタチが悪い訳 主役は選手、サービス精神でなくただの自己顕示欲

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3つ目の理由はコロナ禍が長期化する中、わざわざマスクを外して人の所有物に唾液をつけてしまったこと。しかも市民に感染予防を呼びかけるべき自治体のトップがそれを行ってしまったことが怒りを誘ってしまいました。河村市長は、「メダルセレモニーという晴れの場でも選手自らメダルをかけている」「メダルを噛む行為は、基本的に記者たちも要求していない」ことすら知らなかったのではないでしょうか。

「表敬訪問」という古き悪しき慣例

このニュースはすでにさまざまなメディアで扱われていますが、あまり指摘されていないのが、“表敬訪問”という形式について。これは「敬意を表するために、相手方へ訪問する」ことを示す言葉ですが、「なぜ戦い終えたばかりのメダリストたちがわざわざ会いに行かなければいけないのか」という問題をはらんでいます。

「市民を喜ばせられる」「競技普及のため」「本人にとって名誉」などの意義を掲げる人々もいますが、それは以前の話で、現在はそうとは思えません。これだけネットが普及・発達した現代において、市長への表敬訪問が本当に市民を喜ばせ、競技の普及につながり、本人は名誉と思うのか……「表敬訪問は古くから続く役所、地元メディア、競技団体らの悪しき慣例」と言ってもいいのではないでしょうか。

後藤さんは「名古屋が大好きなので、地元に金メダルを持ち帰ることができてよかった」と語り、河村市長に金メダルを噛まれたときも笑っていました。しかし、「彼女は本当に河村市長を表敬訪問したかったのか」「金メダルを噛まれて嫌ではなかったのか」はわかりません。

何より河村市長は後藤さんに対するリスペクトに欠けていました。たとえば、対面の際に発した、「ハイボールを飲みながら(試合を)見た」「テレビで見たたくましい雰囲気と違いキュートで驚いた」などのコメントは、アスリートに対するリスペクトを感じない余計なひと言。きちんと公式のジャージとマスクをつけて訪問し、郷土愛をしっかり語った後藤さんに対する姿勢としては、批判されて当然でしょう。

後藤さんは5試合でリリーフ登板し、すべて無失点の好投。何度もチームを敗戦の危機から救い、13年ぶりのオリンピック連覇に貢献しました。河村市長はその活躍を本当に見ていたのでしょうか。もし見ていてこういう振る舞いをしてしまったのなら、「自分は市長なのだから許してもらえるだろう」というおごりがあったとしか思えないのです。

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