ワクチンでは止まらないデルタ株「衝撃の感染力」 接種で感染減の前提は米当局最新データで崩壊
ブレークスルー感染がどれくらい一般化しているのか、またブレークスルー感染を起こした場合、ウイルスがどれくらい長く体内に残るのかは、まだ明らかになっていない。ブレークスルー感染は頻発するものではなく、感染の大部分は未接種者によるものだとワレンスキー氏は述べた。それでもCDCが吟味したデータは、2回の接種を終えた人々がウイルスの思わぬ媒介者となって感染を広げる場合があることを示唆している。
「そのため勧告を見直した」と、ワレンスキー氏はニューヨーク・タイムズの電子メール取材に答えた。
接種先進国のイギリスが「隔離」を続ける理由
新たな研究結果は、接種完了者であっても、感染者に接触した場合には検査の必要があることを示している。症状がなかったとしても、だ。イギリスでは、接種を完了していても、検査で陽性が確認された人と接触した場合には10日間の自主隔離が求められる。
もちろん、今回のデータはワクチンの効果が失われたことを意味するものではない。重症化や死亡の予防については、ワクチンは今も高い有効性を維持しており、ブレークスルー感染が入院につながるケースはまれだ。
CDCのデータによると、入院患者の97%は未接種者となっている。ただ、科学者の間では、ワクチンでは自身への感染や他人への感染を完全には防げないとする警告が昨年の段階で聞かれるようになっていた(自然感染で獲得した免疫の効果は、もっと弱いかもしれない)。
従来型のウイルスが免疫を突破することはまれだったことから、CDCは5月に、接種を済ませた人は屋内でマスクをしなくてもよいという指針を出した。ところがこれまでのパターンは、デルタ株には当てはまらないようだ。
デルタ株の感染力は、中国の武漢で広がったもともとの新型コロナウイルスの2倍となっている。ある研究によると、デルタ株に感染した未接種者のウイルス量は、従来株に感染した場合の1000倍になることもあるという。CDCの研究もこれを裏付けていると、データをよく知る専門家の1人は指摘した。
ブレークスルー感染のクラスターが報告される頻度も上がってきており、接種完了者にも、鼻づまり、頭痛、喉の痛み、味覚・嗅覚障害といった上気道感染の症状を訴える人々が出るようになっている。ただ、集中治療が必要になるケースは圧倒的に少ない。ワクチンによって生成された免疫がウイルスをやっつけ、肺に到達するのを防いでくれているからだ。
ウイルスを侵入口で止め、上気道で増殖しないようにするため、鼻腔内に噴霧する経鼻ワクチンの必要性を訴える専門家もいる。
スタンフォード大学の免疫学者ミハル・タル氏は「第1世代のワクチンは死亡と入院を予防するものだが、第2世代のワクチンは他者への感染を防ぐものになる」と話した。
(執筆:Apoorva Mandavilli記者)
(C)The New York Times News Services
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら