ベンツ「2030年完全EV化宣言」日本への影響は? もう「綺麗ごと」では済まされない存亡の機
具体的には、自動車産業界を取りまとめていくというヨーロッパ産業界のリーダーとして統制力、ドイツ政府やヨーロッパ連合(EU)、ヨーロッパ委員会(EC)との折衝力、そしてドイツ政府とのつながりが強いとされる中国に対する外交力だ。
これらを総じれば、“政治力”という表現が妥当ではないか。
今回の「2030年EV化」の発表について考えれば、EUの執務機関であるECによるヨーロッパ域内での「2035年EV化」発表の8日後に行われている。
裏を返せば、ダイムラーを筆頭とする自動車メーカー各社とECとの間で、規制に対する今後の方向性についての合意がなされたと考えるのが妥当で、今回のメルセデス・ベンツの発表は、ヨーロッパの自動車メーカーのECに対する総意を示した形だと捉えるべきだ。これもダイムラーの政治力の表れである。
2021年に入り、ヨーロッパではボルボ、ジャガー、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とPSA(プジョーシトロエン)が合弁したステランティスがEV戦略を発表しているが、今回のメルセデス・ベンツ発表はそれらとは重みが違う。
一方で、日本ではいまだに自動車産業界の急変に対する危機感が希薄だと感じる。
まだまだ“綺麗ごと”の域を出ない日本
筆者は7月14日のECによる「2035年EV化」の発表後、日本の自動車メーカー各社やその周辺産業の関係者らと意見交換をしたが、「当面はヨーロッパ市場での“綺麗ごと”だろう」という見方が主流のような印象を持った。
だが今回、メルセデス・ベンツによる“お墨付き”となったことで、ヨーロッパ市場でのEVシフトによる日本を含めた世界市場への影響は、一気に鮮明になってくるだろう。
ここからは、具体的に日本の自動車産業界に関わる各方面の人たちは、ヨーロッパのEV化促進の流れを受けて、これからどのような課題を解決する必要があるのか。これまでの取材や意見交換を基に具体例を挙げてみたい。
まずは、国(関係省庁)と自動車メーカーだ。
経済産業省 製造産業局 自動車課においては、「グリーン成長戦略」からさらに一歩踏み込んだ“規制”について、国土交通省 自動車局と連携して本格的な議論が進むべき時期にきたといえる。
ハイブリッド車主流での段階的な電動化強化や、水素の広域的な活用という”綺麗ごと”だけでは、日本経済の大黒柱である自動車産業の競争力を維持できなくなる危険性が高い。
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