ベンツ「2030年完全EV化宣言」日本への影響は? もう「綺麗ごと」では済まされない存亡の機

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この場合、前述のECとダイムラーが先頭に立つヨーロッパ自動車産業界との関係性のように、日本では経済産業省・国土交通省とトヨタを先頭とする日本自動車工業会との“さらに強い連携”が望まれる。

そのうえで、自動車産業を支える部品メーカーは、事業構造の大規模な変革に伴う上層部の意識改革が必須だ。

数年前、大手自動車部品メーカー幹部が、CASEの同社に対する影響について冗談まじりに「ぼーとしていたら、横からナイフで刺されて、驚く間もなく死んでしまうようなもんでしょうか」と話していたが、もはやそんな冗談がいえる状況ではない。

販売会社やガソリンスタンドも

販売面では、ヨーロッパメーカーを取り扱う販売代理店から、すでに大きな不安の声があがっている。EVについては、メーカーの日本法人(輸入元)がネット直販を本格化するためだ。

ボルボ初のEV専用モデル「C40」は、日本でもオンラインのみで販売されることがアナウンスされている(写真:Volvo Cars)

また、当面の間、販売されるハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のリセールバリュー(再販価格・下取り価格)をどう維持するかも課題であるし、“猫も杓子もEV化”の流れの中で、独自のブランド戦略をどう展開するのかも問われる。日本車の販売会社についても、事情は同じだ。

ガソリンスタンドを筆頭とするインフラ事業者も、事業体系を根本的に見直す時期となったといえる。

これまでも、多目的事業化による“地域のなんでも屋”という発想での事業企画を進めてきた事業者はいるが、今後はこうした展開を加速させる必要が出てきた。その中には当然、修理事業者の融合も含まれる。

修理事業者には後継者不在の小規模事業者が多いうえ、近年では一般整備を意味する“分解整備”に加えて予防安全技術に対する“特定整備”が義務化されるため、技術習得やコスト増加への対応など、悩ましい問題が多い。そこに、さらに本格的なEV化が来ることになるのだ。

最後に、我々自動車ユーザーはどうするべきかを考えてみよう。国、メーカー、インフラが慌てて時代変化に追いつこうとする様を、静観するしかないのだろうか。

EV化とは、単にクルマの中身が電動化するだけではなく、社会におけるクルマの在り様が大きく変わり、そうした社会変化に対して人の生活も大きく変わることを意味する。これからも、日本社会の移り変わる様子を現場でしっかりと見ていきたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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