批判ある「社員の業務委託化」先行したタニタの今 導入から4年、本社メンバーの15%が移行
さらに、谷田社長がより意義を感じているのは、キャリア開発の観点での自由度が高まったことにある。
谷田社長は、一部の企業で違法残業などが多い実態を踏まえて、国として労働時間規制を強化すること自体には賛成だが、「(労働時間規制の)網がかかりきっていると、新人は伸びなくなる」「自分が今持っている能力以上の負荷をかけたら、初めてその能力以上のものを獲得できます。今の働き方改革で、残業したら負け、というような風潮でやっていると絶対に伸ばせない」と指摘する。労働時間を抑制する方向に傾きすぎると、トレーニングのための時間や自由度が不足してしまうというのだ。
「新しいことをしようとすると、時間がかかります。日本経済の活性化をしようと言う時に、能力開発の観点がすっぽりと抜け落ちているんです」と強調する。実際に、個人事業主化したメンバーには、入社2年目だった人もいるという。
「脱法的」という批判をどうとらえるか
一方で、業務委託化について批判が集まるのが、労働法の適用対象外になるため、「脱法的ではないか」という指摘だ。確かに、従業員の自由度を高めたり、報酬で差をつけたりするのであれば、社内の制度を改定すればいい。これに対して、谷田社長は、「組合があるので、なかなかアグレッシブな変化をのんでもらえない」と本音を口にする。
また、労働法の対象外になることについて、「団体交渉はできなくなりますが、個別に交渉はできます。下請法もありますし、いじめのようなことはできません」と語る。
他の企業が、個人事業主化を「首切り」目的で導入する懸念も指摘されているが、「包丁のようなもので、悪用する人の話をしだしたら、製品はできません。悪い使い方をする人がいる場合、声があがって、自然に市場で淘汰されていくでしょう」と指摘する。
「批判は甘んじて受けたい」というスタンスでありながらも、「タニタとしてはチャレンジ精神を出したかった」「この仕組みを知らない中小企業の方が、『これをやったらみんなもっと幸せになる』と知ってもらって、この制度を使ってもらう方がよっぽど幸せが広がる」という考えているという。
将来の目標は、個人事業主になったメンバーの中から、取締役が出てくることだ。取締役は雇用される従業員ではないため、再び従業員にならなくても経営陣に入れる。谷田社長は「取締役が出たらすごく楽しいでしょうね。そういう流れを待っています」と期待している。