なお、デフレと言われる現象も、新興国からの製品輸入(および新興国生産者との競合)によってもたらされたものである。サービスの価格があまり変化しなかったにもかかわらず工業製品の価格が下落したのは、このためだ。
こうして、それまで日本が国際経済で占めていた地位が中国に浸食された。そして、日本企業の利益率も徐々に低下したのである。このことは、特に製造業において顕著にみられる現象だ。
製造業の利益率が低下した
製造業の総資本営業利益率は、高度成長期においては、8%を超える高い水準であった。80年代になって低下したが、それでも6%台の水準は維持していた(80年代は一般に日本経済の黄金期と考えられているが、利益率でみると高度成長期よりは落ち込んだことに注意が必要である。これは、日本の賃金が上昇したことや、為替レートが増価したためと考えられる)。
ところが、90年代になってからは、製造業の総資本営業利益率は、3%程度というかなり低い水準に下落してしまったのである。つまり、80年代から90年代にかけて、半分程度の水準にまで落ち込んでしまったことになる。
非製造業の利益も若干低下はしているが、製造業の利益が顕著に低下していることに注意が必要だ。これは、アジア新興国との競争にさらされるのが製造業であるからだ。
日本企業の利益率の低下は、赤字企業比率(赤字企業数÷企業総数)の推移でもみることができる。70年代の中頃まで、赤字企業は全企業の3割程度でしかなかった。
その後、比率は上昇し、80年代には5割程度になった。90年代になって比率はさらに上昇して、90年代後半には7割程度にまでなったのである。