「アルツハイマー新薬」有力病院の投与拒否続く訳 効果に疑問符つく一方、安全面の懸念も

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「アデュカヌマブでよくなった患者はいない。患者の認知機能は必ず何らかの割合で低下し続ける」。ガンディー医師は自身の患者にこう伝えているという。

薬価も高額で、メーカーのバイオジェンは患者1人当たりの年間薬剤費を5万6000ドル(約610万円)に設定している。

精神科医と外来診療に携わる1次医療医約200人を対象に行われた最近の調査では、FDAの決定は支持できず、自身の患者にアデュカヌマブを処方する予定はないとする回答が大半を占めた。

承認プロセスが怪しすぎる

こうした批判の高まりを受けてFDAのジャネット・ウッドコック長官代行は先日、FDAの承認手続きについて連邦機関が独立した立場から調査するよう求めた。「これらの懸念によりFDAの決定に対する国民の信頼が揺らぐおそれが出ており、問題の事案を独立した組織で検証するのは極めて重要だと考える」とウッドコック氏は書面で述べた。

アデュカヌマブをめぐっては以前、ほぼ同一の2つの臨床試験(治験)が中止されている。患者に対する有効性は見られないと独立したデータ監視委員会が結論づけたためだ。

バイオジェンが後に行った解析では、ある治験で高容量の投与を受けた患者には認知機能の低下を遅らせる効果をごくわずかに認めることができたものの、その水準は18段階評価で0.39にとどまった。別の治験では患者に対する効果は一切確認されていない。

治験に参加した患者の約4割に脳の出血や浮腫が生じた。多くは軽度で処置しやすいものだったが、約6%は重大な副作用が出たことから治験を途中でやめている。ガンディー医師の患者の1人は脳内微小出血が10カ所に生じたため治験を中止しなければならなくなったという。

外部の専門家で構成されるFDAの諮問委員会は昨年終盤にデータの査定を行い、承認に強く反対する勧告を出した。そして6月にFDAが諮問委員会の勧告に背いてアデュカヌマブを承認すると、3人の諮問委員がこれに抗議して辞任。アメリカ老年医学会も「根拠が足りず時期尚早」としてFDAに承認見送りを強く求めていた。

FDAは先日、あらゆるアルツハイマー病患者を対象にアデュカヌマブを承認したことに批判が広がったことを受けて、軽度の認知障害を抱える患者のみに投薬の推奨範囲を大きく絞り込んだ。後期段階の患者に対する使用データが存在しないのが、その理由だとしている。

(執筆:Pam Belluck記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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