実体のない「不安」が恐怖よりもずっと厄介な理由

「嫌われる勇気」の著者が教える恐怖との違い

正体のない不安に人生を左右されていませんか?(写真:topic_kong / PIXTA)
パンデミックの収束が見通せない中で社会に不安が広がっている。さらに、人との接触が制限される中で、コミュニケーションに不安を抱える人も増えている。そもそもわれわれが常日頃から抱えている不安とは何なのか?
アドラー心理学の第一人者で哲学者でもある岸見一郎氏は、「対人関係」「仕事」「愛」「病」「老い」につきまとう不安から脱却するには、まずは不安の正体を知ることが第一歩だという。本稿は、岸見氏の新刊『不安の哲学』から一部抜粋・再構成して不安の正体を紹介します。

恐怖と不安の違い

デンマークの哲学者キルケゴールは不安の対象は「無(む)」であるといっています(『不安の概念』)。これは日常的な言葉でいえば「何となく不安だ」ということです。あれやこれやの出来事によって不安になるのではなく、じつは何でもないこと(無)が人を不安にさせるのです。

これに対して、恐怖はある特定のものに関係します。大きな犬が近づいてきた時、地震で大地が揺れる時に起きる感情は、恐怖であって不安ではないということです。

大地の揺れが収まればほどなく恐怖はやみます。しかし、「また地震が起きるのではないか」と思う時に起きる感情は恐怖ではなく不安です。特定の日時に起きる地震についての恐怖ではなく、漠然とまたいつか地震が起きるかもしれないと思って不安になるのです。直近に経験した地震があまりに大きくそのため強い恐怖を感じたとしたら、この不安も大きなものになるでしょう。

恐怖と不安のどちらが厄介かといえば、対象がない何となく感じる不安です。そのような不安は本来なくてもいい感情ですが、ずっと付きまとうことがあるからです。

それでは、不安はただ主観的なもので、気持ちの持ちようで解消できるようなものかといえばそうではありません。今の世には不条理なことが多々あります。そのようなことがなければ不安を感じることはないでしょう。不条理で理不尽なことがあっても、目を瞑れば不安は解消するわけではありません。もっとも不安になるだけでは何も変わりません。ではどう対処すればいいのでしょうか。

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