ちまたにあふれるドル安予想の真実味を考える 「金利」と「需給」、今は「金利」を見るべき理由

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「財政赤字の規模を思えば、下落幅はもっと拡大しても不思議ではない」という主張は、フローの財政赤字よりもストックの政府債務残高に着目した議論といえる。もちろん、財政赤字(フロー)の結果として政府債務残高(ストック)は積み上がるが、ドル相場との関係性には不安定さも残る。

例えば、下図のように前回の正常化プロセスでは政府債務残高がリーマンショック後から高止まりしていてもドル相場は急騰してきた(ピンク色の網掛け部分)。一方、この時、フローの赤字は改善傾向にあり、実際にドル高が進んだ(前ページ図、ピンク色の網掛け部分)。政府部門の赤字に関していえば、名目実効ドルレートはストックよりもフローの方向感に反応しやすいのではないか。

ワールドダラーを見る意味

あえてストックの概念にこだわるのであれば、ワールドダラーは名目実効ドルレートと安定した関係にあるように見える。ワールドダラーはFRB(連邦準備制度理事会)のベースマネーとニューヨーク地区連銀が海外金融当局等の代理で保有するアメリカ国債残高(カストディ・アカウント)の合計を世界のドルの総量と見立てる計数である。要するにそれ自体はストック概念である。

だが、上述したような巨額財政赤字を事実上、ファイナンスする存在としてFRBによる大規模資産購入があり、これがベースマネーの増加につながっている側面がある。図示されるように、ワールドラーの変化率とドル名目実効相場は安定した関係があるように見えるが、ワールドラーの変化率はベースマネーの伸びにけん引される部分が大きく、それ自体はFRBの量的緩和規模や、その背後にあるフローの財政赤字の規模と無関係ではない。

次ページ「需給」が効く世界と「金利」が効く世界
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