FRBパウエル議長「昔の知識は忘れろ」の真意 「貨幣数量説」は不発、現実は単純じゃない
2月末の金融市場ではアメリカの10年債利回りがついに1.60%と1年ぶりの高水準をつけた。インフレ期待も高止まりしており、「未曾有のマクロ経済政策が制御不能なインフレを引き起こすのではないか」という懸念が金融市場の内外で高まった。アメリカではハーバード大学のサマーズ教授が拡張財政路線に警鐘を鳴らすなど、インフレ論争が少しずつではあるが始まっている。
2月24日の議会公聴会においてFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「インフレ目標達成に3年以上かかる」と述べるなど、意図せざる引き締め期待を打ち消している。だが、実質金利(名目金利-インフレ期待)の上昇から株価も動揺を見せた。なお、アメリカの金利上昇に対するドル円相場の反応は薄いが、それでも徐々に、しかし確実に水準は切り上がっている。やはり2021年に関しては「アメリカの金利上昇に応じたドル全面高」という基本シナリオは堅いのではないかと思われる。
パウエル議長はマネーとインフレの関係を一蹴
さまざまな議論が交錯しているが、煎じ詰めれば、「現行政策がインフレを招くかどうか」が争点である。アメリカ、日本、欧州の3極では各種政策対応の結果として、対GDP比で見たマネーサプライは急増しているため、これが一般物価の騰勢を招くのではないかとの懸念がくすぶっている。
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