ちまたにあふれるドル安予想の真実味を考える 「金利」と「需給」、今は「金利」を見るべき理由

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ワールドダラーの変化率が今後の名目実効ドルレートの上昇を示唆するのは、最初に出した図、財政赤字との関係とほぼ同じような話である。やはりドルの方向感を見定めるうえでは、財政赤字に関するフローの議論のほうが有用であろう。そうだとすればドル相場は今後、上昇していくほうに賭けるのが無難と思える。

とはいえ、ドル相場を見通すにあたって「需給と金利のどちらを重視すべきか」に絶対的な正答はない。巨大な財政赤字や政府債務残高の存在を理由に通貨の下落を説くこと自体は基本的に正しい。問題はドル相場に関し、「財政赤字が拡大するからわらで金利が上昇している場合、本当に為替市場は金利を無視して、赤字を理由にドル売りを続けるのか」という話である。筆者はそう考えていない。

「金利のある世界」でかすむ「需給」

2020年のように「金利のない世界」が常態化する局面では、確かに「需給」のような論点は説明力を持ちやすい。ただ、これは、「それしかすがるものがない」という消去法でそうなっているとも思う。2020年、対ドルで最も買われた通貨は人民元、ユーロ、日本円だった。この3通貨が世界3大経常黒字国であったことは偶然ではないと筆者は考えている。

2021年から2022年にかけてはあくまで世界が正常化に向かう局面であり、それは「金利のない世界」から「金利のある世界」へ移行する局面でもある。世界経済が回復基調にあり、民間部門の投資意欲が復元されることを前提とすれば、「金利」に照らして相対的に投資妙味を備える通貨から評価されるのが自然ではないか。FRBの正常化プロセスを踏まえれば、それはやはりドルになる公算が大きいと筆者は考えている。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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