世界を震撼させるEU「脱炭素」ゴリゴリの本気度 包括案には国境炭素税など具体案が目白押し
誰もが注目するのは世界で現在最も多く温暖化ガスを排出しているアメリカと中国の削減目標だが、さらに重要なのはその具体策だ。中国とインドは国境炭素税の導入案を公然と批判しており、日本も乗り気ではない。アメリカは独自の国境炭素税を検討中と述べるにとどまっている。
具体的にどの製品が対象となるのかはまだはっきりしない。アメリカが特に懸念しているのは、アメリカ製の鉄鋼に対する影響だ。
アメリカは難しい立場に
ヨーロッパの国境炭素税についてアメリカは難しい立場に置かれている。バイデン政権はヨーロッパとの同盟関係の修復に力を入れているが、ここには気候変動対策も含まれる。しかし、アメリカでは温暖化ガス排出に税などを課すカーボンプライシングの法整備にメドが立っていないため、ヨーロッパの国境炭素税はアメリカ企業を直撃するおそれがある。
バイデン政権は国境炭素税を独自に導入する可能性を示しているものの、議会は与野党で勢力が拮抗しており実現の見込みは乏しい。ホワイトハウスで気候変動問題を担当するジーナ・マッカーシー大統領補佐官は7月13日、ブルームバーグが主催したイベントで「もちろん、どの議論においても(国境炭素税は)議題から外れているわけではない」と語った。「国境炭素調整措置(炭素税)はいろいろな意味でチャンスととらえることができる」(マッカーシー氏)。
包括案には、EU域内でも論争の火種となる法案が含まれている。例えば、内燃機関を搭載した新車の販売を段階的に禁止する案は、ヨーロッパの一部自動車メーカーから反発を買う公算が大きい(ガソリンおよびディーゼルエンジンを積んだ新車の販売を2035年に禁止する案にフランスは反対したとブルームバーグは報じている)。石炭火力発電を廃止していく取り組みも、大規模な石炭産業を抱えるポーランドやハンガリーなどからの反対に遭う可能性が高い。
ヨーロッパ委員会がこのタイミングを選んで包括案を公表したのは、気候変動対策で先行するヨーロッパの立場を際立たせ、中国やアメリカなど他の主要排出国に圧力を加えるためだ。
「これは『われわれは数字にコミットしているだけでなく、非常に明確な具体策も持っている』ということを宣言する初めての試みとなる」。パリ協定が採択された第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で特別代表を務めたヨーロッパ気候基金のローレンス・トゥビアナ最高経営責任者は、電子メールの声明でこう述べた。
(執筆:Somini Sengupta記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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