SMAP"40代の頑張り"は夢を与えるか? 「27時間テレビ」でタモリ、さんまの助言が真っ二つ

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タモリさんは、「このままいってほしい」、と淡々と語り、さんまさんは、「くたくたのフリをするな」と叱咤激励する。同じ芸能界のリーダーでありながら、タモリさんは、“効率よく、長く続けていこう”、というヨーロッパ的な考え方のリーダーで、さんまさんは、“愚直に人一倍働いて、やりきれ”、という精神性を重んじる日本の体育会的なリーダーとも言えます。

前述の「歩かせる」「歩かせない」議論に戻ると、タモリさんが番組の責任者なら、歩かせなかっただろうし、さんまさんなら歩かせただろうと思います。しかしながら、この判断に正解はありません。

ただ、不眠不休で頑張るSMAPの姿を見て、「つらかった」という人たちの中には、自らが長時間労働に苦しんでいる30代、40代の方々が多かったのではないでしょうか。もう若くはないのに、肉体を駆使して長時間がんばる彼ら。しかも体調が悪くても自分からは休まない。。その姿が自分のことのように見えて、身につまされた……。

誰かの気持ちを軽くしたり、ポジティブにしたりすることが番組の目的だったのに、一部の視聴者をつらい気持ちにさせてしまったのであれば、もしかしたら「歩かせた」演出は、番組の趣旨にはそぐわなかったかもしれません。

さんまさん的な「芸能界で生き抜くために全力で頑張れ」という気持ちももちろん分かるし、それが高視聴率につながったのは確かなのですが、今回のラストについては「うまく休みながら長く頑張ろうよ」というタモリさん的な考え方のほうが、結果的にはよかったのではないかと思います。

「27時間テレビ」でSMAPの価値を再発見した人も多いわけですから、SMAPには、長く長く活躍してほしいと同世代はみな、思っているのではないでしょうか。そして、今度こそ、本人たちが納得いくような完璧なノンストップライブを見せていただきたいものです。
 

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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