日本で売ってないランクル70が海外では現役な訳 トヨタのヘビーデューティSUVは質実剛健を貫く

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AWDシステムはパートタイム式。最新モデルはデュアルモードオートマチックロッキングハブ、前後の電動デフロックなどを装備する。悪路走行をサポートするさまざまな電子制御デバイスが満載の現代のSUVと比べると極めてシンプルな機構だが、これも信頼性のためである。ホイールは今もスチール製がメインだが、今ではほとんど見かけないサイドリング付きで、どんな僻地でもタイヤレバー1本あればタイヤの交換造業が可能だ。

雪道も走破していく(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

このように、最新モデルと言っても基本的なメカニズムは1984年に登場した初期モデルと基本的には変わらない。とはいえ、今は時代の変化に合わせて必要最小限の安全装備は装備されるが、普通のクルマとは比べものにならない信頼性/耐久性の試験を行い、「前の仕様と変わらない」と確認されたうえで採用されている。ちなみにABSとパートタイムAWDとのマッチングはかなり難しかったようで、車輪速センサー(シャフトではなくタイヤで計測)は70系専用に開発されたそうだ。

「クルマの故障=死」とならないために

なぜ、かたくなに変えないのか? それは「構造がシンプルだと故障が少ない」「もし故障しても修理が簡単にできる」「補修部品がどこでも手に入る」などの理由が挙げられる。何かあればJAFがすぐに駆け付ける日本では考えられないが、世界には「クルマの故障=死」を意味する国や地域が存在する。そこでクルマを走らせるには、信頼性と耐久性、そして整備性の高さがどの性能よりも重要であり、それをかなえるクルマは世界中を探しても70系しか存在しないのだ。

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世界には70系でないといけない道があり、70系がなければ生活できない人、70系が止まると命を失う危険性がある人が数多く存在する。つまり、70系が今も生産・販売を続けるのは「ニーズがあるから」というビジネスうんぬんの話ではなく、「世界の命を守るクルマ」としての使命で造り続けられているのだろう。

大きく変わった300系と何も変わらない70系。「すべての人に幸せを届けることが原点」(豊田章男社長)を掲げるトヨタには、どちらも欠かすことができない。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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