今年6月、中東・ドバイで世界初公開イベントが行われたランドクルーザー(以下ランクル)「300系」が日本で正式発表された。1965年にヘビーデューティ「40系」から派生したステーションワゴン系「55系」の末裔であるとともに、現在のランクルシリーズを牽引するフラッグシップモデルでもある。
ちなみに歴代モデルを振り返ると、60系が9年、80系が8年、100系が9年だったのに対して、先代の200系は何と14年と群を抜くロングライフだ。これを好意的に見ると「世代交代しなくても商品性が高かった」といえるが、筆者は「世代交代に困難を極めたのではないか?」と予想している。
ランクルを名乗るクルマの絶対要件は「世界中のあらゆる地域・道で使われることを想定し、最も厳しい基準を持ってクルマ作りを行うこと」だ。その一方で、ステーションワゴン系は「本格クロスカントリー4WD」である事に加えて「オフロードの高級車」としての役目も求められた。その結果、オンロード性能や内外装の質感、装備の充実などが高められたが、絶対要件とのバランスを取るのが難しくなってきたのも事実である。
アフリカの道で感じた先代ランクル200の「課題」
実は筆者は2018年にトヨタの「五大陸走破プロジェクト」の取材の際にアフリカの道をランクル200系で走ったことがある。スケジュールの都合でアフリカならではの未舗装路/砂漠ではなく舗装路が中心だった。当初は「ちょっとガッカリ」だったが、この経験で200系の弱点を知る事となった。都市部の整備された路面はともかく、街を外れると舗装路とはいっても路面は荒れて平らな箇所はないうえに時折大きな穴も存在する……。
そんな路面かつ白線も路肩もない対面通行を100~120km/hのペースで走ると、直進安定性、乗り心地、応答性の悪さが疲労やストレスにつながることを実感した。「その弱点をドライバーがカバーするのもランクルの醍醐味」という意見もわかるが、筆者は「ランクルだから……」で片づけてはダメだと思った。
当然、開発陣も認識していた。300系のチーフエンジニアはMrランクルと呼ばれる小鑓貞嘉氏からバトンを受け継いだ横尾貴己氏が担当するが、このように語っている。
「ランクルのキーワードは『耐久』『信頼』『悪路走破性』ですが、それゆえにほかの部分に課題がなかったといえばうそになります。さらにより厳しくなる環境規制/衝突要件もクリアしていかなければなりません。それらをすべて満足させるために300系が選んだ道は、『素性の刷新』でした」
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