ECB、18年ぶりの戦略修正は「ハト派」へのシフト ラガルド総裁はあえて答弁で曖昧さを残した
別の記者からも、「容認する(tolerating)と目指す(targeting)は全然違うものです。ECBがより高い物価上昇率について、目指すのではなく容認するということは、2%からのオーバーシュートは目標ではないということでしょうか」という質問が出た。ここでもラガルド総裁は上述の趣旨を繰り返すだけで、有益な情報は示さなかった
さらに、また別の記者から、「いまだに物価目標のオーバーシュートが目標なのかどうかわかりません。ECBは中期的に物価目標をオーバーシュートさせることにコミットしているのでしょうか。それとも低インフレに対するECBの政策対応の1つの結果としてオーバーシュートするにすぎないということでしょうか。そこをクリアにすることが大事です」と繰り返し質された。記者たちはオーバーシュートを目指すのかどうか知りたかったわけだが、そこは判然としない。
率直に言って、今回の物価目標の修正はかなりわかりにくさをはらんでいる。似たような質問が相次ぐのは、その意図が伝わっていない証左である。普段、ECBを精査している記者たちがそう感じるのだから、金融市場全般にとっては推して知るべしである。いかに解釈すべきなのかという議論が、今後も市場で継続してくすぶるのではないか。
ハト派的修正であることは確か
しかし、総じていえば、今回の修正がハト派的であることは確かだろう。旧来の物価安定の定義「2%未満であるがその近辺」では2%からオーバーシュートする余地が皆無だったのだから、それが容認する(tolerating)のであろうと、目指す(targeting)のであろうと、ECBがより物価上昇に寛容な中央銀行に生まれ変わったことは間違いない。市場参加者としてはその点さえ押さえておけばよいだろう。
そのほか気候変動にかかる論点についても相応に話題性を帯びるものだが、こちらの議論は別の機会に譲りたい。
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