ECB、18年ぶりの戦略修正は「ハト派」へのシフト

ラガルド総裁はあえて答弁で曖昧さを残した

ところで、大々的には報じられていないポイントとしては、筆者は分析手法が修正されたことに注目している。これまでECBは経済分析と金融分析による「2本柱アプローチ(two pillar approach)」を軸に政策決定を行ってきた。政策理事会後の声明文も経済分析(economic analysis)と金融分析(monetary analysis)に関するパラグラフはわざわざ太文字で表記されている。

今回の戦略修正では、これらの分析にfinancial analysisが加わるとしている。日本語訳が難しい。従来のmonetary analysisはもともとマネーサプライなどを注視していたので今後は貨幣分析と訳し、新しく加わったfinancial analysisを金融分析とすることになろうか。厳密には、①経済分析(economic analysis)と②貨幣・金融分析(monetary and financial analysis)の2本柱ということなる。

では新たに加わった金融分析とは何を指すのか。公表文には「medium-term price stability from financial imbalances and monetary factors(金融不均衡と金融要因による中期的な物価安定)」とあるので、すなわち資産バブルの生成・崩壊などが物価安定に及ぼす影響を注視するということだと見受けられる。もちろん、これまでも資産バブルの兆候は注視されていたはずだが、今回は明文化された。

資産市場への警戒が格上げされたという点で、昨今の金融市場の雰囲気を思えば、タカ派的な修正といえる。ドイツを筆頭とするタカ派メンバーの主張に配慮したものであろう。

わかりにくさが否めない物価目標

なお、質疑応答では「一時的に物価上昇を容認(tolerate)するというが、どれくらいのオーバーシュートをどれくらいの時間軸で容認するのか」と質す記者がいた。これに対しラガルド総裁は「物価目標はあくまで中期的。金融政策の発動から物価に影響が及ぶまでのラグや不確実性を踏まえれば、短期的な物価の上下動に対応するのではなく、あくまで中期的な安定を念頭に政策運営を行う」という公表文を要約したような回答を繰り返すだけで言質を与えなかった。

次ページ「目指す」のか「容認する」のか、言質を与えず
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