マンション価格「人工知能の査定」が高精度なワケ デジタル化の遅い不動産業界でAIが本格普及へ

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以前からアメリカのように日本でもレインズの成約データを公開するべきとの意見はあるが、不動産業界が強く抵抗してきた。その一方で、レインズの成約データは精度が悪く、使えないとの話も聞く。

正直に成約価格を登録している仲介会社が少なく、場合によっては成約直前になってレインズへの登録義務がない一般媒介契約に切り替える「専任外し」といった裏ワザを使う仲介会社もある。

とはいえ、不動産テックベンチャーにとっては、予測精度を高めるための学習データが得られなければ、AI査定はいつまでたっても人間が行う査定に勝てずに消費者の信頼も得られない。自らが学習データを収集しようとしても量・質を確保するのは難しく、筆者も日本ではAI査定の普及はなかなか進まないだろうと考えていた。

AI査定ツールの外部販売を開始

「2016、2017年頃に、不動産流通大手の複数のトップに会って話をする機会があった。そのときに、先方からAI査定などのツールを売ってほしいという話が出てきた」(西山社長)

今回のコロナ禍で日本企業のデジタル対応が遅れていたことが明らかになったが、2015年に経産省と東証がDX銘柄の前身である「攻めのIT経営銘柄」の選定をスタート。2016年の銘柄発表時に、評価委員会委員長の伊藤邦雄・一橋大学名誉教授が「業界別に調査してIT経営が最も遅れているのは不動産業だ」と発言。業界内にも徐々にデジタル技術を活用しようという危機意識が芽生えていた時期だ。

不動産流通大手であれば、大量の成約データを持っているし、自ら利用するAIシステムに学習させるためであれば正確なデータを使って、精度の高い不動産価格推定システムを構築できる。ここからSREでは、AI査定を利用して自ら不動産ビジネスを行うだけでなく、AIツールを外部に販売する事業に乗り出した。

2018年10月にSRE AI Partnersを設立して金融機関向けAIツールの提供から事業をスタート。同時期にソニーネットワークコミュニケーションズが提供するホームAIシステム「MANOMA」を搭載したマンション「AIFLAT(アイフラット)」の開発も手掛け始めた。2019年6月に「ソニー不動産」から「SREホールディングス」に社名変更し、不動産ビジネスなどの知見を活かしたAIツールの開発やAIサービスの提供を加速してきた。

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