マンション価格「人工知能の査定」が高精度なワケ デジタル化の遅い不動産業界でAIが本格普及へ

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「どの企業にAIエンジンを提供しているかは守秘義務があるので言えない」ものの、地方を含めて不動産仲介会社からの引き合いはここに来て一気に増えているという。

すでに不動産流通最大手の三井不動産リアルティが2019年12月から、東急リバブルも2020年10月からAI査定サービスの提供を開始しており、大手に対抗して自社サイトでAI査定サービスを取り入れる不動産仲介会社は今後、増えていく可能性は高いだろう。

SREでは、従来の人間による査定価格とAI査定価格を、実際の成約価格を比較した誤差率を公表している。東京都23区内マンションの誤差率中央値を独自調査した結果、人間による査定価格の誤差率は7~8%であるのに対し、同社のAI査定ツールは5~7%。「今後、データ量が増えれば、誤差率を4%までは下げられるだろう」と見込んでいる。

AI査定ツールなどのサービスを提供する不動産仲介会社の課金契約数は、2021年3月期で477社増えて1026社となり、2022年3月末には1700社に拡大する見通しだ。契約企業からは成約価格などのデータを提供してもらえる契約となっており、顧客拡大とともにデータ量が増えれば増えるほど、AI査定ツールの精度が向上することが期待される。

AIで「不動産ブローカー」の仕事が奪われる?

2013年に英オックスフォード大学の准教授だったマイケル・A・オズボーン氏らによる論文「雇用の未来」では、AIによって仕事が奪われる職業として「銀行の融資担当者」「スポーツの審判」「不動産ブローカー」の3つが上位に挙げられていた。

先ほどの清水教授が開発に関わった融資審査のAIシステムを導入した大手金融機関では、融資審査担当者が200人から20人へと大幅に削減されたという。

Zillowのサイトには、不動産鑑定とゼスティメイトの査定価格は異なるものだと明記している。しかし、不動産仲介会社が不動産鑑定士に鑑定を依頼したり、自社内で価格査定のできる人材を育成したりするコストを考えれば、AI査定を導入してその精度を高めていくほうが将来的には大幅なコスト削減になるだろう。

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