日銀総裁選び福田首相の本音
「政争は水際まで」なのに、日銀総裁問題はついに延長戦となった。空席は大きな損失だが、一方で「ねじれの効果」を実感した人も多かったはずだ。武藤昇格に最後までこだわった福田首相は、「財政と金融の分離」を唱えて反対する民主党に対して、「余人をもって代えがたい」「財務省事務次官出身という点だけを問題にするのはおかしい」と言い続けた。だが、決着がつかなかったため、ねじれ前には見られなかった場面が現出した。
前回まで総裁人事は首相官邸と自民党、財務省、日銀など政府・与党側の水面下の調整で決まっていたため、表面化しなかった本質的問題が、今回は国民注視の下で大議論になるという展開となった。中央銀行のあり方、トップの資質、政府と日銀の関係、「財・金分離」の本質、総裁の決定方法と政治の関与の仕方、空席となった場合の影響などだ。
ところが、さらに重大な事実が土壇場で明白になった。日銀総裁問題は任命権者の首相が上記の諸問題を本心でどう考えているかが実は最重要ポイントであったが、時間切れとなった3月18日、福田首相は「金融と財政の連携が必要。分離を唱える人の気持ちがわからない」と、やっと本音を吐露した。「日銀の独立性・中立性」という原則は頭になく、政府と財務省と日銀の「一体化」が真意だったのだ。「日銀中興の祖」と言われた森永元総裁は1974年12月の退任の際に「日銀総裁の一番大きな仕事は、政策のタイミングを誤らないこと、政府に対して言いたいことを言うこと」と述べている。延長戦の行方は不透明だが、「一体化」の下での政府優位を目指す福田首相が日銀総裁の任命権者として不適格であることが判明した。そこが総裁問題をめぐるねじれの最大の効用であろう。
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