三菱電機、「35年不正」で社長辞任の懲りない体質 鉄道装置で不正が発覚、説明もコロコロ変わる

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こうした風土は労務問題の頻発も招いた。三菱電機では2014~2019年に過労などが原因で社員6人が労災認定を受けた。2019年に新入社員が自殺した際には、当時の指導員が自殺教唆の疑いで書類送検された。それでも、2020年6月の経営戦略説明会では、相次ぐ労務問題に関して杉山社長が「企業体質の問題だとは捉えていない」と発言するなど、経営陣の危機感は希薄だった。

今回の会見で追及されると一転して「品質問題も労務問題も、情報を共有できなかった問題が主な要因で、根っこでは同じ部分がある」とようやく認めた。

調査で本当に真相は解明できるか

今回の不正では、どこまで踏み込んだ調査ができるかが課題だ。2016年度以降3度の全社点検を実施するも、その後パワー半導体の検査不正、車載ラジオの不適合製品出荷、今回の検査不正などが次々と明らかになっている。

第三者の調査で真相が解明できるかも不安だ。調査委員長は元検事の弁護士。一方、一連の問題を見逃した監査委員会の委員長は元検事総長の大林宏氏だ。形だけの調査では意味がない。

7月5日には柵山正樹会長が就任したばかりの経団連副会長の活動を自粛するほか、今回の不正があった製品の納入先でもあるJR東日本の社外取締役を辞任することになった。

不正や隠蔽の体質をつくり上げ、問題を見抜けなかった歴代経営陣は責任を免れない。徹底した調査と体質改善が図れるか、予断を許さない。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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