双子パンダが飲む「混ぜて使う人工乳」意外な中身 「上野赤ちゃんパンダ」の今をマニアックに解説

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上野動物園としては、本当は母乳だけで育てたい方針だが、そうはいかない事情が出てきた。

シンシンの食欲は少しずつ戻り、タケノコを食べる量は増えている。搾乳もうまくいっている。上野動物園の大橋直哉・ 教育普及課長は「なるべく多くの量を確保したいので、職員はタイミングをはかり、できる限り搾乳するようにしています」と話す。

7月1日に撮影された8日齢の双子(写真:公益財団法人東京動物園協会提供)

一方で、赤ちゃんはどんどん成長して、母乳を飲む量が増えている。しかも双子で2頭分だ。そのため母乳の量が、双子の飲む量に追いつかない。これは、双子パンダの飼育では珍しくないことだ。

上野動物園では母乳を補うために、双子の様子を慎重に観察しながら、母乳に人工乳を混ぜる取り組みを7月1日から始めた。

この人工乳はパンダ専用ではなく、人間の赤ちゃん用の粉ミルクとペット用の粉ミルクを混ぜたもの。中国側にも内容を確認してもらった。

なお、双子の姉で2017年6月に生まれたシャンシャン(香香)は、2018年12月のひとり立ち(シンシンとの別れ)に向けて、同年10月から人工乳を飲み始め、2019年に飲むのを終えた。

シャンシャンが当時飲んでいた人工乳は、森乳サンワールドが開発し、アドベンチャーワールドなどで使われている「パンダミルク-10」で、双子が現在飲んでいるものとは違う。

双子を間違えないよう背中に緑のライン

双子は一緒に保育器に入れることもある。間違えないように、1頭(「子1」)の背中に印をつけた。

この印は緑色のラインだ。7月2日に上野動物園に確認したところ、安全な成分でできた「アニマルマーカー」という実験動物用のマーカーで描いている。色は、時間の経過とともに薄くなり、やがて消えるそうだが、6月28日と7月1日に撮影された動画を見比べると、7月1日はラインの下半分ほどがほとんど消えている。

理由は「おそらく母親が舐めたためでしょう」(大橋課長)。パンダの母親は、赤ちゃんを落ち着かせるためや、自力で排泄できない赤ちゃんを綺麗にしてあげるために、赤ちゃんを舐めることがある。シンシンは、シャンシャンが幼い頃にもペロペロと舐めて、シャンシャンの体を唾液でほんのりピンク色に染めていた。「子1」の消えた緑のラインも、シンシンの愛情のしるしかもしれない。

シャンシャンをモデルにしたぬいぐるみ(左下)と「子1」。7月1日撮影。画像は動画からの切り出し(画像:公益財団法人東京動物園協会提供)

7月1日に撮影された動画でもう一つ、目を引いた点がある。保育器にいる赤ちゃんのそばに、小さなパンダのぬいぐるみが置かれているのだ。

このぬいぐるみは、シャンシャンの生後2日目(体長14.3cm、体重147g)をモデルに作られ、1760円で販売されている。(参照:『可愛くない「ピンクのパンダ」ヒットした裏側』)

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